プロローグ ページ1
「姉さん!早くしないと、試合始まっちゃう!」
「まだ始まらないって。それより、前見てないと転ぶぞ!」
「大丈夫だって…おわっ!?」
「全く…ほら、立てる?」
少女は少年に手を差し伸べる。
ごめんごめん、と笑いながら少年は少女の手を取り立ち上がる。
そして、二人は手を繋ぎ歩き出した。
「ねえ、姉さん」
「ん?」
「俺、将来ね、」
・
「……ん」
少女は座席でいつの間に寝てしまったらしく、ぼやけている視界を振り払うように頭を横に振った。
と、一つ前の座席に座っていた少年が、ひょこっと首を出し彼女を見る。
「あ、起きた?おはよう」
「…おはよう。ごめん、いつの間に寝ていたみたい」
少女は一度身体を伸ばすと、暗闇の中を走るキャラバンの外を見る。
何も見えない暗闇。
だが、その先にあるのは確かな光だった。
「もうすぐ着くぞ!準備はいいか?」
「…あぁ、勿論だよ」
少女は全てを奪われた。
家族も、これからの人生も、掴むべき幸福すべてを一度は奪われた。
「君達がくれたチャンスだ。…絶対に、救ってみせる」
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作者名:白 | 作成日時:2021年11月7日 20時