オシオキ。【gr】 ページ11
───────パシャッ
軽い水音が鼓膜に伝わると同時に
私の前髪からぽた、と雫がこぼれる
鼻腔をくすぐるのは紅茶の香り
…私は、頭から紅茶をかけられた
目の前に居る方…
私のご主人様の、グルッペン･フューラー様に
彼は私を見ることなく
空になった紅茶のカップを机に置く
｢ぬるい。ぬるすぎる。
それに、紅茶を入れるのは結構だが、
角砂糖を3つ入れろと言ったはずだ。
この注意は前もしたはずだが？…無能。｣
立ち尽くす私を見向きもせず
書類に目を通しながら言葉を投げる
｢…返す言葉もございません。
申し訳ありません、すぐに替えを…｣
｢要らん。それより早く片付けろ。
絨毯も後で交換するように伝えておけ。｣
｢…かしこまりました。失礼します。｣
紅茶の入ったポットとカップを下げ、
入り口で深くお辞儀をして部屋を出る
｢…またやっちゃった。
はは…、紅茶かけられるのは初めてだな…。｣
エプロンのポケットからメモ帳を取り出し
栞を挟んだページを開いて、
【紅茶は温かい状態で提供する
角砂糖は3つ、角砂糖入れの補充をする】
と、ペンを走らせてメモをとる
紅茶の雫がメモ帳に1粒落ちる
じわ、と広がり吸い込まれていく
あぁ、後で洗わないと。
今日はお風呂少し早めにしようかな
｢…昔は、ぬるい方が好きだったのに…。｣
ぼそ、と呟いた言葉は
広い廊下に吸い込まれて消えていく
グルッペン様は物心ついた時から
私が専属でお仕えしているご主人様
フューラー家唯一のご子息…いや、
すでにご両親は他界されているので
若くしてフューラー家の当主となっている
私はグルッペン様と同い年。
彼の専属メイドとして何年も一緒に居る
昔は今より雰囲気があたたかくて、
あんなに冷たい目じゃなかった。
…ううん、昔が優しすぎたんだ。
ミスしても優しく許してくれたのは、
彼も私も子どもだったから。
昨日はお掃除が間に合わなくて
呆れられてしまった
朝も起こす時に
お着替えのご用意を忘れてしまった
頼まれていたお菓子の買い出しも
違うものを買ってきてしまった
まだ解雇されていないだけ有難い。
グルッペン様は、
まだ私をここに居させてくれる。
私は無能だから。
…無能は、もっと頑張らないと。
邪魔だと思われても
無能だと罵られても
それでも、彼を支えられるなら
(…冷たいあの目にも、耐えなきゃ。)
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ぽやま。(プロフ) - mariaさんコメントありがとうございます！設定はかなり意識してます！気づいて貰えて嬉しいです✨ (2023年2月19日 19時) (
レス) id: 23fa074e26 (このIDを非表示/違反報告)
maria - 占い師コネシマ・・・たしかに魔主役の最後のあとがきで祈禱師コネシマっていっていたけれど・・・ (2023年1月16日 1時) (レス) @page42 id: 2d8c9edfbf (このIDを非表示/違反報告)
ぽやま。(プロフ) - 塗さん有難うございます！更新は遅いですが見て頂けて嬉しい限りです！ (2023年1月3日 0時) (レス) id: 23fa074e26 (このIDを非表示/違反報告)
塗 - この作品、私のお気に入りです‼️最近寒いので、体調には気を付けて下さいね。 (2022年12月7日 7時) (レス) @page6 id: d1b072df9a (このIDを非表示/違反報告)
ぽやま。(プロフ) - 朝さんコメントありがとうございます！感想嬉しいです。続きぜひぜひ楽しんでください (2022年5月21日 14時) (レス) @page26 id: 215bd6f50b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽやま。 | 作成日時：2022年1月20日 8時
