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彼女を待つ駅の改札。

いつになく落ち着きが無く、自分の身形が気になって仕方ない。
前髪を触ったり、肩のホコリを落としたり……
男だから人前で鏡なんかは見られない。

浮き足立っている自分がふと可笑しくなった。
落ち着け、俺。

デートなんて今まで何度もこなしてきただろ?
女の子の扱いだって、少なくともKZの中では一番慣れているだろ?

しかも今日のお相手は、誰よりもよく知っているアーヤだ。
しかし、名前を思い浮かべただけなのに、急に耳が熱くなった。
らしくもないな、俺。

「黒木君。」
突然声をかけられ、驚いた。
振り返るとアーヤが笑顔で立っている。

黒のノースリーブワンピースに髪をアップにして。
いつもより大人びた格好に、『ハートに矢が刺さる』ってこんな時にも使うのかな?と苦笑いしてしまう。

「どうしたの? あ、もしかして私、服装間違った?」

俺からの注文。
“カジュアルではないお洒落をしてきて”

俺が多分変な顔をしたのが気になったのだろう。
慌てた様子がまた可愛くて、笑ってしまった。

今日は一日中こんな感じなのかもしれない。
ふわふわ浮いた、心地好い時間。

たまには良いよな……俺だって青春真っ只中。
決していつも子供心を脇に置いているわけではない。

「いや、大丈夫。雰囲気がいつもと違っていて、可愛いよ。さぁ、行こうか。」
アーヤに切符を渡し、ホームへと向かった。



「黒木君、どこに行くの?」
電車のドアにもたれたアーヤは聞いてくる。

「ん?内緒だよ。着いてからのお楽しみ。」
今日の行き先は伝えていない。

正直、着いてからのアーヤの反応が怖い。
少しでも興味があれば楽しめるし、興味が無ければ至極退屈な時間を過ごすことになる。

このデートは自分への誕生日プレゼントのつもり。
すでに自分の誕生日をアピールする歳では無くなったので、せめて自分で用意した。

二人きりでの外出、KZの活動以外での誘いに付き合ってくれただけでも嬉しい。
だから事前に行き先を伝え、断られるのだけは避けたかった。

卑怯? 姑息?
いや、あくまでも自分へのご褒美だ。

流れる景色を見ながら、それ以上何も聞かないアーヤに感謝した。

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千祥(プロフ) - りぃあ♪#さん» コメ及び、読んで下さりありがとうございました(*^^*) (2020年4月7日 21時) (レス) id: 1ff717e023 (このIDを非表示/違反報告)
りぃあ♪# - とっても面白いです!更新楽しみにしています! (2020年4月6日 19時) (レス) id: 77648adcbf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千祥 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年9月15日 1時

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