・ ページ7
「第七師団の兵営から東に四十キロくらいは移動できたな」
飛行船から森へ降り、少し歩いたところで杉本が言った。
「馬に乗って追って来る兵士が上空から見えた。あんな目立つものに乗っていたんだから、おおよその位置は把握されている」
「目立つのもそうだが、あれは試作機。燃料があまりないこともあちらは知っている。操縦が聞かなくなれば風に流されるのみ。その流れをよめば落下位置は推測可能だ。なるべく早く距離をとる必要があるだろう」
尾形に補足するように言った私。
その瞬間、杉本が撃たれた箇所を襟巻きで隠したのを、私は見逃さなかった。
「その前に……」
「うおッ」
私は杉本の襟を掴み、近くに座らせた。
「こいつの治療だな。できるか、アシㇼパ」
アシㇼパは頷き、近くの植物を探る。
「血が止まってないの、気づいてたのか」
「わかりやすいんだよ、お前は」
手当てが必要ならば素直にそういえばいいものを。
遠慮がいる仲でもなかろうに。
……死んだら、何もかも終わりだと言うのに。
「グズグズしてたら追いつかれるぞ」
尾形が平坦な口調で言う。
私はなぜだかその言葉が、口調が腹立たしく感じられ、思わず眉間に力が入った。
「止血しなきゃ死ぬ」
「……」
私の言葉に、尾形は何も返すことはなく、ただじっとこちらを見つめた。
一体なんなんだ？
言いたいことははっきりと言ってもらいたい。
「レタンノヤ…『ノコギリソウ』を見つけた。葉をもんで塗れば止血の効果がある」
アシㇼパが摘んだ花を早速潰し始める。
杉本はその光景を見ながら話し出す。
「鯉登少尉が撃った拳銃は二十六年式…『豚の鼻に当たってポトリと落ちた』で有名な低威力の拳銃さ。そんな銃で俺が殺せるかよ。鈴川は、豚の鼻より弱かったが……」
「鈴川はやっぱり殺されたのか……」
アシㇼパの呟きに、杉本は何も返さなかった。ただほの暗い瞳で、アシㇼパを見つめている。
その姿が、私には先程の尾形と重なって見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プスメラウィッチ(プロフ) - 私は、尾形百之助を一票します。 (4月1日 23時) (
レス) id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
おほしさま - 見守るセミさん» コメントありがとうございます！！そうなんですよ！！！！もう、みんな良いんですよ！！！！だからめちゃ迷うんですよね！！！！(ˉ ˘ ˉ; ) (3月27日 23時) (レス) id: 14120fce3f (このIDを非表示/違反報告)
見守るセミ - んぬムゥ尊い。マジで尊い。あどうもセミです。おがっちゃんもいいしすぎもっちゃんでもいいどちらを取っても幸せです。ワシはおがっちゃんも好きなんですが、すぎもっちゃんが最推しです。あぁ〜でも、月島さんも捨てがたい、、、 (3月27日 16時) (レス) @page31 id: d5e2d1caf3 (このIDを非表示/違反報告)
おほしさま - エクスタシーさん» うわぁーーーー！！！！！！ほんとだぁーーー！！！！！うわ、マジでごめんなさい。今まで全く気が付かなかった…。ご指摘下さり誠にありがとうございます！！！大感謝です！！ｕ ′̥̥̥ ⌑ ‵̥̥̥ ｕ (3月26日 20時) (レス) id: 14120fce3f (このIDを非表示/違反報告)
エクスタシー - 杉本× 杉元○ (3月25日 22時) (レス) @page31 id: 9a0b80f385 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おほしさま | 作成日時：2024年3月7日 2時
