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コンコン
誰もいない廊下へと響くノック音。
それは今の私の心の空虚さを表しているようだ。
「入れ」
中から声がかけられる。
ドアノブを回し、声の主のいる部屋へと入る。
そこには机に腰掛ける、額に白い当て物をつけている男。そして、入ってすぐ横に鼻の低い男の二人がいた。
「具合はもういいのかい？」
「はい。いつも通り、一度寝たら良くなりました」
「それは良かった」
にっこりと笑みを浮かべ、机に腰掛ける男——鶴見篤四郎は言った。
私はここ、第七師団に入って以来、定期的に体調を崩すようになった。
だが、一度眠りにつくと、次に起きた時にはすっかり治っている。
「月島だけですか。私はてっきり尾形と宇佐美も呼んだのかと」
鼻の低い男、月島基を見た後、鶴見中尉に言う。
「呼んだ？」
声のした方へ振り向く。
「何だ。やっぱりお前らも呼ばれたのか」
口角をやや上げて、宇佐美と尾形に言う。
「はっ、お前は機嫌が治ったようでなりよりだよ」
「ほんとほんと。お前、寝起き面倒だからな」
「るせえな」
尾形と宇佐美の軽口に苦笑いで返す。
すると横から「おい、お前ら」と月島から注意されてしまった。
「そろそろ話を初めて構わないかな」
今まで成り行きを見守っていた鶴見中尉が、私たちに言う。
その口調は優しいものだったが、それとは反対に少々の圧が籠っていた。
私はこの人のこういう所が嫌いなんだ。対比したものを同時に放つこの男に吐き気がする。
「はぁ〜もちろんです！！」
「「……」」
目の前の焦がれる男からの叱りの言葉に宇佐美がうっとりしたような目付きで無駄に覇気のある返事を上げる。
こいつの趣味は本当に訳が分からん。
それとは対象的に私と尾形は冷めた視線を鶴見中尉へと向けた。
「うん！良い返事だ！宇佐美上等兵！」
「ありがとうございます！！」
あぁ、うるさい。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
