目覚め ページ6
「おい！起きろ！」
まだ眠気の残る虚ろな目をしているだろう私はある男の無駄に大きな声で夢から現実へと引き戻された。
「……宇佐美、うるさい」
「はぁ？僕がせっかく起こしてやったんだぞ、さっさっと起きろ！」
そう言ってばっと、私にかかっていた毛布を男——宇佐美時重によって取り上げられる。
ここは、陸軍最強と謳われた、陸軍第七師団の兵舎。そこにある、私の部屋だ。
「ったく、仕方ないな」
そう言って起き上がり、ベッドの上に座る。
するとズキっと頭に痛みが走り、反射的に患部を押さえ「いっ」と軽く声をあげてしまう。
「何だ、いつもは寝ればすぐ治るのに。まだ痛むのか？」
言葉だけ見れば心配しているように思えなくもないがこの男に限ってそれは無い。
「平気だ。寝起きだから少し痛んだだけ」
「あっそ」
ほら、心配など微塵もしていない。
「で、何の用だよ」
右手で前髪をかきあげながら宇佐美を睨みつける。
せっかく眠っていたのに。……まぁ、見ていた夢はさほどいい物でも無かったが。
「相変わらず、寝起きは機嫌悪ぃな」
「……尾形」
扉に背を預け、腕を組んで突っ立っている男。尾形百之助は薄ら笑みを浮かべながら言った。
「鶴見中尉殿がお呼びだ」
「……」
私はその言葉を聞き、すっと目を細める。
私がベッドから腰を浮かすと、ギィーという不穏な音が鼓膜を鳴らした。
「身支度を済ませたらすぐに行く。少し待つように伝えてくれ」
「了解」
「ふんっ」
宇佐美は不機嫌そうに鼻を鳴らして、私の部屋から出ていった。
あいつは鶴見中尉にご執心だからな。
私の態度が気に食わなかったんだろう。
それに続いて尾形も部屋を後にした。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
