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「よく知っているな。今幾つだ？」
歳をきいているのだよな？
「今年の九月で十二になりました」
私が答えると、土方さんは驚愕の声を上げた。
「これは驚いた。十六程の娘かと思っていたんだが。随分と博識だな。言葉遣いも十二になったばかりの娘とは思えん」
「まぁ、そういう風に教育されてきたものですから」
「……そうか」
先程までより声の高さが数段落ちた。
「怪我をしているのかい？」
「もう治りかけですけどね」
「どうしてそんな傷を？」
「父にやられまして」
「父上にか。そうされねばいけない理由でもあるのか？」「さあ、分かりません。ですが父は私が物心ついた頃から私を殴っていました」
「母上は？」
「母はそれを見て、父を咎めることはありませんでした」
次々と重ねられる質問によって過去の記憶が呼び覚まされていく。
「……母は、父を愛していました。けれどそれは歪んだ愛でした。父は第七師団の上等兵なのですが、そこで新しい想い人を見つけたようで。相手は男、しかも中尉でしたけれどね。母は父に相手にされなくなり、心を病んで自害しました。馬鹿な話です」
ここまで話してしまっては、もう自力で口を止めることは出来なかった。
淡々と、愚痴をこぼすように自身の身の上を語っていく。
「父は第七師団に入ってから私をただ殴り付けるのではなく、強く育てようとするようになりました。そのための鍛錬でできた傷なのです。これは」
そう言って、体に無数ある内、腹部にある傷を擦りながら言った。
あちらからは見えないのだから、そうする意味はあまりないのだが。
「父上はなぜ強く育てようとしているんだ？」
「分かりません。けれどそんなことはどうでもいい」
「どうでもいい？」
「はい」
これは私の素直な気持ちだった。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
