再会 ページ34
ぱちぱちと音を立て、赤く熱を放つ駐屯所を見つめる。
あの後、結局杉本は取り逃した。
橇から落とされた残りの兵士を連れて、駐屯所へと戻る。
すると、もうそこには周りの外気も暑く染めあげる、業火の景色が広がっていた。
どうやら杉本の仲間がまだ残っていたようだ。
杉本の寿命の蝋燭を吹き消すなどと言っておきながら、逆にその蝋燭から火を移され、彼の寿命を伸ばしてしまった。
ざまあないな。
遅れて戻ってきた鶴見中尉が私の横へと並ぶ。
すると、「中尉殿」と呼ぶ声がした。
「何者かが火を。離れてください。弾薬に引火します」
「杉本。いや、杉本一味に刺青を集めさせた方がいいな。奴らの方が一枚上手だ」
鶴見中尉が独りごつと二人の兵士がこちらへ近づいてくる。
「申し訳ありません。火の回りが早くて、刺青人皮を持ち出せませんでした」
兵士が眉を八の字にして不安げな表情で言うので、心の優しい私は微笑しながら教えてあげた。
「それなら心配入らんぞ。うちの中尉殿はお前たちが思うよりも気が狂っている」
「へ？」
兵士たちは何を言っているのか分からないといった様子でぽかんとしている。
不意に笑い声が広がる。
鶴見中尉の高らかな笑い声と、業火があげる火の粉の音が不気味な不調和音を奏でた。
あぁ、うるさい。
心の中で悪態をついた私は、鶴見中尉に背を向けゆっくりとその場から離れていく。
その後ろにはコートの前をあけ、刺青人皮で繕った革服を自慢気に見せびらかしながら、未だ狂ったように笑い声を上げ続ける鶴見中尉の姿があった。
やや振り返り見た、炎の赤い光が反射して映る姿はまるで大量の返り血を浴びているかのように不気味だった。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
