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「ここだよ！」
そう言って、女が指を指した先には一件の店があった。
「二階堂」
私は二階堂へ顎で指示を飛ばした。
「分かりましたよ」
洋平、双子の兄の方が返事をして、二人で店の戸口へと向かって行く。
仲のいいことだ。
ゆっくりと戸を開き、中の様子を伺う二人。
私の立っている位置からでは中を覗くことは出来ない。ここで見えんということは、私の隣でニヤニヤとしながら突っ立っている鶴見中尉にも見えていないだろう。
「どの男だ。刺青のことを探っている奴は」
「軍帽の兄ちゃんだよ」
二階堂の質問に女が答えた途端、中から顔に傷のある一人の男が、勢いよく二人を蹴飛ばし飛び出してきた。
それに向かっていった兵士もすぐになぎ倒され、思い切り顔を踏んずけられてしまう。
ほぉ、中々だな。
「動くな！」
男はその間に三名の兵士によって銃を向けられ囲まれた。
「跪け、この状態で打つとお前の顔から飛び出した弾が誰かに当たるかもしれん」
鼻血を垂らしながら起き上がった二階堂が男の後頭部に歩兵銃を突きつけ、脅し文句を垂れる。
「私も参戦致しましょうか」
「いや、良い。君が入ればすぐに決着が着いてしまうだろう」
鶴見中尉は間を置いて続けた。
「もう少し見ていたい」
……悪魔め。いや、死神か。
少し離れた場所で観戦している私たちがそんな会話をしていると、今度は同じく鼻血を垂らしている双子の片割れが男の膝裏を銃で殴り、地面に転がした。
そのまま何度か歩兵銃の庄氏で男の顔面を殴りつける。
「下がれ、殺そう殺そう」
そう言ったのは、先程男に銃を向けていた方の片割れ。男へと向けられたのは拳銃だった。
「そろそろ頃合か」
呟くように言った鶴見中尉は真っ直ぐに戦場へと歩みを進めて行った。
私もそれに続く。
二階堂の前で倒れ込んでいる男は鼻血を出して、口の中を切ったのかその周りが血だらけだった。
バンッ
切れのいい、清々しい銃声がこの場にいる者全員の鼓膜を揺らした。
「そこまで！まだ殺すな」
男はゆっくり顔を上げ、こちらを見据える。
「私はお前の死神だ。お前の寿命の蝋燭は私がいつでも吹き消せるぞ」
そう、男に向かって言い、「ふぅ」と歯の間から息を吐き出すこの死神の笑顔が、
いつもより一段と、不気味に見えた。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
