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「……この刺青、身体の正中線で途切れています。つまりこれは、囚人を殺して皮を剥ぐことを前提に彫られているんですよ」
私はゆっくりと立ち上がりながら今気がついた事を中尉と、宇佐美、少し離れた場所に立っている尾形へと告げた。
自然と口角がつり上がってしまう。きっと今の私はとんでもない悪人面をしているのだろう。
まぁ、目の前にいるこの男には負けるだろうが。
宇佐美と尾形も、驚きや軽蔑ではなく、感嘆のような表情を浮かべている。
「素晴らしい」とでも言いたげな、愉しげな表情だ。
「恐らくは、剥いだ囚人の刺青を繋ぎ合わせると、一つの暗号になるのだと思います。もしくは、全てが暗号になるのではなく、重要人物何名かにだけ本物の暗号を彫っているのかもしれませんね」
私は周りの様子を伺いながら考えられる可能性を口にする。
「なるほど。他に気がついた事は？」
「ありません。今私が言えるのはここまでです。暗号の解き方にも見当がつかない」
暗号を解いて浮かび上がるのは、あの線からして恐らく地図だろう。
だがそんなことは、この人ならば、とうに気がついているはずだ。
私がわざわざ口に出して言う必要もない。
「素晴らしい！」
鶴見中尉の手から拍手の音が鳴り響いた。
「やはり、君に頼んで正解だったな。良くやった」
そう言いながら私の頭を撫でる。
あぁ、触らないで頂きたい。
私は下から鶴見中尉を睨み上げる。
「分かった、分かった。だからそんなに怖い顔をするんじゃない」
戯たように参ったの形に手を挙げる。
私、後で殺されるな。
宇佐美の刺すような視線と殺気を受けながら、そんな事を考えた。
「皮を剥ぐのは私が自分でやろう。君たちはゆっくり休むといい」
「はい！」
そう返事を返したのは宇佐美だけだった。
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作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
