最初の刺青 ページ14
「はーあ、なんで僕がこんなこと。どうせなら鶴見中尉殿と来たかった！」
大声で喚き散らす宇佐美。
「うるせぇぞ、宇佐美。鶴見中尉に叱られたいか」
「え、叱られたい！すごく叱られたい！あ、あぁ〜！鶴見中尉殿〜！」
さっきよりも、息を荒らげて騒ぎ出した宇佐美。
こいつにこれは逆効果だった。
「あぁ、もう！ちょっと黙ってろって！！」
「やかましいぞ、お前ら」
「はあぁーーー？なに？喧嘩売ってんなら買うけど？」
「勝てない喧嘩売るなよな、尾形」
ん？今、こいつ「お前ら」って言ったか？私もかよ。
翌日の朝、早速私達は刺青の囚人探しに繰り出していた。
囚人の名前は津山睦雄。三十三人殺しの異名を持つ。
外見の情報は一切無し。
あるのは身体に刺青が彫られているという情報くらいだ。
さて、
「どうやって探し当てるか…」
他の二人がやり合っている中、手を顎に当て考えていると、聞こえてきた。
銃声と悲鳴が。
……探し当てる必要も無かったようだな。
「ほら、行くぞ、って」
私のやや下がった視線の先には、取っ組みあって地面に転がっている、尾形と宇佐美の姿。
オマケに尾形はもうボロボロだ。
「お前らなぁ」
呆れたような声を漏らすと、また先程と同じ銃声が鳴り響いた。
「っ、先いくぞ！」
銃声のした方へ走っていくと、一人の男が、狂ったような笑い声をあげて人を打ちまくっている。
止まらない銃声。
止まらない悲鳴。
あぁ、
「不愉快だ」
私は男の元へと勢い良く走り出す。こちらに気がついた奴が銃を連射してくる。
「なっ！？」
だが、私は蛇行しながら走っているのでそれが私の身体を貫くことは無かった。
男の側までたどり着いた私は銃を蹴りあげ、腹に一発重たい回し蹴りを食い込ませた。
津山の口からは「ぐはっ」とくぐもった声が聞こえる。
首をかき切ってやっても良かったんだが、まずは捕らえて指示を仰ぐこととしよう。
しゃがみこみ、えずいている津山を縛り上げ終わると、ようやく尾形と宇佐美がこちらに到着した。
「何だ、もう捕まえたのか」
「あーあ、百之助のせいだよ」
「良かったなぁ、宇佐美、尾形。鶴見中尉殿にたっぷり叱ってもらえるぞ」
にっこりと皮肉を込めて言うと、尾形はボロボロの顔をムスッさせたが、宇佐美は頬を紅潮させ、息を荒くして喜んでいる。
あぁ、めんどくさ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おほしさま | 作成日時：2023年12月29日 0時
