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「ってぇ……ん、どこ…ここ?」
瞼を開けた先にあったものは、白。
と言ってもゲームやアニメでよくある右も左も分からない精神世界のような所ではなく、まるで中世のヨーロッパにあるような洋風建築が所々に散らされた世界だった。
しかしそのどれもが汚れの一つもない白。
唯一白以外の色といえば、今俺がいる壁の崩れた建物の床に生えた柔らかな草くらいだ。
見覚えのある筈もない異様過ぎる光景を目の前に、俺はただ困惑していた。
「……ほんまにここどこ?」
あれ……そういえば息が苦しくない
頭も痛くない。
……此処は夢か何かか?
短く切りそろえられた草の上でキョロキョロしていると、急に額が露わになる程の強い風が吹き付けてきてぎゅっと目を瞑る。
『お前は紋章が欲しいか?』
「!!」
どこから発されたのか、太くて低い男の声が脳内に響いて咄嗟に頭を手で抑えた。
何……?なんなん、これ
分からない。分からないけど、答えないことには進まないだろう。
「欲しいか……って、もともと俺は」
『質問は欲しいかどうかだ。お前は紋章が欲しいか?』
「…………っ
そら、欲しいわ……」
どうやらコイツに質問以外のことを答えても無駄らしい。
紋章……簡単にいえば、人知を超越した力を持つ証明。俺にとっては"あそこに行くことを許された印"。また俺の首に現れてくれるものなら、欲しいに決まっている。
『ならば何故取り戻そうとしない?
十分な程お前にヒントは与えられたというのに』
「……"ヒント"?"取り戻そうとしない"?」
何言って……?
意味を聞き返そうとしてハッとした。ヒントってまさか、Aが言っていたこと……?
しかし、<紋章を持つ為の条件>を俺は知らない。
『そのヒントを得てからよく考えたか?探そうともせず、また過去から逃げ回って嘆いているだけか?
…………今回は事が事だ、協力はしてやろう
"何を境に"お前の紋章は消えた?』
「何…を……?」
貶されたかと思えば一変、心臓が飛び跳ねる思いをした。
そんなの思い出すまでもない……あの日以外に、ある訳がない。
『あの日、お前は何を失くした』
あの日、……そらるさんたちと下駄箱で別れた、あの日。
失くしたのは、あの日久しぶりに会った親友。
『原因は紛うことなく"それ"にある
そして"それ"があってから、お前は感情の一切を表面上で取り繕うようになった』
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キツネ(プロフ) - や、ヤバい。しらす(。∀ °)で話が何も入ってこねぇ!ていうかそこで爆笑したw (2019年5月12日 23時) (レス) id: f12a239c64 (このIDを非表示/違反報告)
ばけモノ。(プロフ) - 赤りんごさん» そう言っていただけて嬉しいです!移行したパート3の方もよろしくお願い致します! (2018年8月27日 21時) (レス) id: edcac17eb5 (このIDを非表示/違反報告)
赤りんご(プロフ) - ばけモノ。さん» いやいや、全然大丈夫です!この小説大好きです!更新楽しみにしてます! (2018年8月27日 21時) (レス) id: d52f074cb8 (このIDを非表示/違反報告)
ばけモノ。(プロフ) - 倖穂さん» 可愛いイラストをありがとうございました!まだ1話しかないですが移行致しましたのでそちらの方もよろしくお願いしますね!(´∀`) (2018年8月27日 21時) (レス) id: edcac17eb5 (このIDを非表示/違反報告)
ばけモノ。(プロフ) - 赤りんごさん» 凄く嬉しいです!とても可愛いイラストをありがとうございましたぁぁ!!文字数の関係で本作には感想を書けませんでした、…すみません……。 (2018年8月27日 21時) (レス) id: edcac17eb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばけモノ。 x他1人 | 作成日時:2018年7月19日 23時