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side……Snr
大きな衝突音と振動が走る俺のバランスを崩そうとする度、疲労に疲れきった俺は情けなくよろけながらもしっかりと地に足を付けて走った。
正直、走り過ぎておかしくなりそうだった。頭だってクラクラするし、足元もおぼつかない。横腹も痛いわ呼吸器官も悲鳴を上げるわでそんな久しぶりの体力の限界に、落ちたなぁというやり場のない気持ちすらも身体に伸し掛る。
……苦しい
「はぁっ……ぁあ、ぅ」
でも、それでも
「ッはぁ…………あと、すこし、や」
行かないと
今行かなきゃ、一生後悔する気がするから
だんだん音が大きくなってきて、それに伴って地面の揺れも大きくなってきた。広場の割れたコンクリート片も見える。
あと少し、あと……すこしだ。
(……でも、俺はそこに行って、何をする?)
なにが、できる?
――――――ズキンッッ
「う"!?」
頭を鈍器で殴られたように、脳の一箇所に集中して電流のような激痛が流れ、目の前が歪んだ。あまりの衝撃と痛みに、思わず酸素不足の頭を抱えて立ち止まり、疲労のあまり我慢することも余力もなく呻く。
息が苦しい。頭が痛い。痛い、痛い……
歪みに歪んだ脳内と目の前。するとすぐに肘と脚に痛みで滲んで、草と土の匂いが俺を招き入れた。……倒れたんかな、俺
―――「なぁセンラ、何で俺なんかと仲良うしてくれるん?」
―――「見てやセンラ!あのイカスミパスタ胸毛みたいや!」
……ああ、懐かしい声が聞こえる。
何で今思い出してんやろ
一番初めに、俺を真っ直ぐに見て、笑ってくれた人。
守れる力がある癖に、守れもしなかった弱い俺に「センラは強いよ」と言ってくれた人。
―――「センラ。俺、守りたいもんが出来た」
その一言だけを置き去りにしていった俺の友人。
―――「あ、はは……久しぶり、やな……センラ…」
顔全体に朱殷を散らし、見るに堪えない生傷を付けながら、久しく聞いた掠れた声で途切れ途切れに俺の名前を紡いだひと。
(ああ、懐かしい……)
懐かしくて懐かしくて堪らない彼の声を最後に、意識がふっと俺の元を離れた。
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キツネ(プロフ) - や、ヤバい。しらす(。∀ °)で話が何も入ってこねぇ!ていうかそこで爆笑したw (2019年5月12日 23時) (レス) id: f12a239c64 (このIDを非表示/違反報告)
ばけモノ。(プロフ) - 赤りんごさん» そう言っていただけて嬉しいです!移行したパート3の方もよろしくお願い致します! (2018年8月27日 21時) (レス) id: edcac17eb5 (このIDを非表示/違反報告)
赤りんご(プロフ) - ばけモノ。さん» いやいや、全然大丈夫です!この小説大好きです!更新楽しみにしてます! (2018年8月27日 21時) (レス) id: d52f074cb8 (このIDを非表示/違反報告)
ばけモノ。(プロフ) - 倖穂さん» 可愛いイラストをありがとうございました!まだ1話しかないですが移行致しましたのでそちらの方もよろしくお願いしますね!(´∀`) (2018年8月27日 21時) (レス) id: edcac17eb5 (このIDを非表示/違反報告)
ばけモノ。(プロフ) - 赤りんごさん» 凄く嬉しいです!とても可愛いイラストをありがとうございましたぁぁ!!文字数の関係で本作には感想を書けませんでした、…すみません……。 (2018年8月27日 21時) (レス) id: edcac17eb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばけモノ。 x他1人 | 作成日時:2018年7月19日 23時