素直になれない。

...どうして。 ページ26

し「ひどい高熱ですね。原因は重度の疲労。 もしかしたら心労からきてるかもしれません。これなら長い期間熱がでてたはずなんで
すけど...。」


しのぶは倒れてからまだ一度も目覚めていない
Aをみた。


しのぶの薬は打ってあるが、高熱はあまり下がっていない。


結構な頻度で額にのせている手ぬぐいを交換している。





無一郎はAの右手を握ったままAの近くに座り、Aのそばを離れようとしない。



し「それにしても時透さん、Aさんが仰向
けのため このかんざしを取ってあげたいん
ですけど...。」



しのぶがかんざしに手をのばすと








かんざしまであと5cmというところで
ドンッ と目に見えない壁にあたる。





し「このように術がかかっていて私じゃ取れな
いんですよね。時透さんはどうですか？」



無一郎が手をのばす。


かんざしに触れられた。


し「あら...。」



無一郎はそっとかんざしを取ろうとすると...




無「...だめです。触れるけど、取れません。」


し「時透さんなら触れられる...と。」


少し考えていたが頭の回転がはやいしのぶはすぐに気づいた。


し「もしかしてこのかんざしって...。」

無「僕がプレゼントしました。」

し「やっぱり...。」



少し桜色の頬になっている無一郎をしのぶはニコニコとみた。



し「...でも、良かったですね時透さん。」

無「...？」

し「Aさんが術をかけているのは大切にし
ているからですよ。
私の予想があっているなら...『壊れな
い』っていう術もかかっているのではない
でしょうか。」


無「？なぜそう思うんです？」


し「時透さんにプレゼントされたのでずっとつ
けるつもりではないでしょうか。

鬼殺隊だから、鬼と戦うためどんなに動いて
も『取れず』、たとえ人間でも鬼でも許した人
にしか『触らせず』、鬼の攻撃で『壊れず、傷
つかせず』ってところでは？」


無「...！」


『一生大事にします』とAに言われた時の笑顔がよみがえってくる。



無(ほんとに、Aは大事にしてくれてたんだ
な。)


あの時のAはふわりと花のように笑い、心から幸せそうだった。


あげてよかったな、って思った。



でもその彼女はずっと長い期間疲労を隠していた。



積もった疲労があの時限界を迎え、彼女は意識を失った。



ーどうして僕は気づかなかったんだろう。


好きな人の体調くらい気づけるはずだ。






悔しくて、情けなくて、無一郎は唇を噛みしめた。

聞こえた声。→←聞いても、いいかな。

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