店長さんのお話 ページ33
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「へえ、つまり君って康二のこと好きなんだ」
「え、誰がそんな事言いましたっけ?」
「言ったじゃん今。鈍感すぎてムカつく。なんの為に東京来たか分かんないって」
「…………」
ずるずるずる………ちゅるんっ!
ほらさ、会ったばっかの人でも気付くんやけど。
やっぱり康ちゃんて鈍感やねん。
「アイツ彼女いないよ」
「……ええ、そうでしょ…ええええっ!?」
バンってカウンターを叩いて思わず立ち上がれば、店長さんは仰け反って驚いてる。
あ、すみません。と、座り直して、もう一度麺を啜る。美味い。
「彼女居らんのですか?」
「居ねえよ。ひと月前に振られたって。でもあっけらかんとしてたけどね」
「はあ、」
そういえば康ちゃんて、彼女と別れても悲しそうな素振りを見せたことないんよね。
寂しがり屋で常に誰かが居らんと嫌な人やのに、それでも彼女と別れても寂しそうには思わんて矛盾しとらん?
「ん、美味かったです。あったまりました!ご馳走さんでした!」
「ふはは!」
「ん?」
「いや康二と同じだなあって。"ご馳走さん"て」
康ちゃんと同じと言われて、ほわーんと胸の奥までもあったかくなった。
ティッシュで口を拭きながら、店長さんに言われたことを復唱してみる。
「彼女……居らん」
「うん、居ない」
「居らん」
「居ない居ない」
あれ?
ほななんで嘘ついたん?
「気なるんなら聞いてみるしかねえよ。 このまま大阪帰るには、俺は勿体ねえと思うけど」
観光だってしてないんでしょ?って、確かにその通りで。
でも今更どんな顔をして会いに行けば良いのか分からない。
「難しく考えなくていいんだよ。難しく考えても、結局答えなんか端から決まってるもんだから」
そう言ってにんまりと微笑んだ店長さんはサービスと言ってバニラアイスをくれた。
パクリと食べれば冷たくて甘い味が火照った体にちょうど良くて、固くなりすぎた頭を冴えさせてくれないかなぁなんて。
「それじゃあ美味しいラーメンどうもでした!」
頭を下げた私に店長さんは手を振って見送ってくれる。
「また来な〜? 今度は康二に奢らせてね」
「……ふふ」
そう…なれば良いなぁ。
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ゆきんこ(プロフ) - 未憂さん» 未憂さま、ありがとうございます(o^^o)是非結婚してやってください(笑) (2020年12月5日 21時) (レス) id: 86c2a4761a (このIDを非表示/違反報告)
未憂(プロフ) - ふぁーーーーーーーーーー!!!!!(訳:最高です最高すぎました鈍感康二くん大好きです結婚してください) (2020年12月5日 1時) (レス) id: 0ef84b32c7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あやかぽん。さん» あやかぽん。さま、コメント有難うございます!ほんとですか!?私自身は彼主のお話読んだ事がなくて(おい!)、なので読んで下さった事が素直に嬉しいです!そして気に入ってもらえたようでそれも嬉しいです!有難うございました!これからも頑張ろうと思います! (2020年11月29日 10時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - うさのすけさん» うさのすけさま、コメント有難うございます!この方今までの誰より周りに助けてもらいました(笑)私自身も皆さんに支えてもらい完結させる事もでき本当に感謝です。またキュンをお届けできるように頑張りたいと思ってます(^^) (2020年11月29日 10時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あまとうさん» あまとうさま、コメント有難うございます!お心遣いもとても嬉しいです。シリーズの繋がりには力を入れていたので褒めてもらえて嬉しい(^^)今は前向きな気持ちで考えてますので、気長に待っていただけたらなと思います! (2020年11月29日 10時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年11月8日 1時