失われた愛に滴る青い涙2 (ページ43)

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第89話ページ43

貴方side

ヒ「ほぅ…。よくわかってるじゃねぇか」

貴「見た目も怖いです」

ヒ「お前は芸術のよさを分かってねぇ」

貴「芸術の、ですか」

ヒ「あぁ」

貴「…分かりませんね

私に芸術は無縁です」

ヒ「いや…

お前の…術は芸術性を感じる…」

貴「術…？」

ヒ「さっきのだ」

貴「花鳥風月ですか？」

ヒ「聞いた話では天候を自在に操れるらしいな」

貴「はい」

ヒ「雨を降らせろ」

貴「いまですか？」

ヒ「あぁ」

貴「濡れますよ」

ヒ「いいからさっさとやれ」

貴「……花鳥風月」

ヒ「太陽を出せ」

貴「いま降らせたばかりなのに」

ヒ「やれ」

貴「……花鳥風月」

ヒ「ほら、見ろ」

そういったサソリさんの尻尾の方を見ると…

貴「わぁ………綺麗な虹…」

ヒ「ほら

お前の芸術も美しいじゃねぇか」

貴「私の…芸術…」

ヒ「これはお前の雨と日がつくったもんだ

お前の芸術だ

枯れた土地に降る雨

暗い土地に指す日光

平和な土地に降る雷鳴

殺風景な土地に積もる白雪…

いずれの土地にも掛かる七色の橋…

最高の美じゃねぇか」

貴「……でも一時(いっとき)ですよ、これは」

ヒ「あ？」

貴「この術は、例えば雨や雪を降らせるとしたら最長でも一週間です

晴れを呼ぶには無限ですが虹だとほんの数分…」

ヒ「いいんじゃねぇのか？

一時の美ってのもよ」

貴「サソリさんが求める美とは」

ヒ「見てわかんだろ

俺は朽ちることない傀儡を使う…

俺が求めんのは永久の美だ」

貴「永久……」

ヒ「………おい、」

貴「はい、いますね」

ヒ「俺がやる」

貴「お願いします。

サソリさんの芸術、拝見させていただきます」

現れた数人の忍を一瞬で亡き者にするサソリさん…

亡骸が…………見ていられないほどのものに…

貴「あ、あの…………」

ヒ「あ？」

貴「サソリさんって………

赤砂のサソリですか…？」

ヒ「オメェ知らなかったのか

砂隠れのサソリって聞いたら俺しかいねーだろ」

貴「サソリが傀儡を操れば

周りの砂が赤く染まることからつけられた異名…

その傀儡使いは残虐で殺戮を繰り返し

風の国の忍里を一夜で潰したと聞いたことがあります…」

ヒ「あぁ。俺だな。」

貴「すみませんでした！」

ヒ「あぁ？」

貴「今までのご無礼をお許しください！」

ヒ「何だお前いきなりどうした」

そんな…聞いてない…

あの赤砂のサソリだなんて聞いてない！