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助手席の窓ガラスをノックして俺が来たことを知らせると、キャロルは車のロックを解除してくれた。フロントガラスの方から周りながらキャロルをチラ見した。
キャロルはライオンヘアに土色のニット帽を被せ、赤と緑のジグザグ模様の入った手袋をして、重そうな安物トレンチコートを着ていた。胡桃色のトレンチコートは立ってみると膝丈ほどの長さがあるが、座っていると太ももと黒色のタイツが見えてしまっていた。
ドアを開けて頬に暖かな風を感じ運転席に乗り込んだ。暖房のレベルを二から一番強い五に上げた。手に息を吹きかけたり、こすりあわせ熱を獲ようとする。アメリカの冬は恒温動物にとって大敵である。
「妻というものがありながら、クリスマスにひとりにするとか貴方何考えてるの?」
キャロルは新聞を折りたたみはじめた。
「だから五分前には帰ってきただろ」
「三十分前には帰ってきて。こんな日に違う女の子といるのも許しがたいのに」
「はいはい。すみませんでした」
妻の声は落ち着いていて、凸凹もしていない。コーヒー(ビター)に小分けのミルクを入れたような安心感があった。柔らかな朝日の差し込む、気の緩んだひと時のように。
キャロルは(新聞をドアポケットに入れてから)俺のコートのポケットから細胞(皮膚、髪の毛、血液)が入った三種類の試験管を取り出して、後ろにおいてあるクーラーボックスの中に入れた。これで三割ほど仕事が片付いたことになる。
キャロルは自分の手袋を脱いで膝においた。それから俺の手をぎゅっと握って自分の胸元によせ、俺が先ほどからやっている無駄な行為(温まったためしがないが、人類はどうしてもこれをやってしまうらしい)をしてくれた。キャロルの手はとても暖かく、湿っていた。
「改めて。ハッピーホリデイ、ロバート」
「ハッピーホリデイ、キャロル」
後に鼻の頭が赤くなってきたが、車内はいっこうに暖まる気配がなかった。俺の身体の中で暖まっている部分は何ひとつなかった。だが、キャロルに申し訳ないと思い「もうハンドルを握れそうだから大丈夫だ」と言った。キャロルが俺の手を放して再び手袋をした。
普通なら今から仕事場に戻り、二十一世紀よりさらに進化したiPS細胞(iPS細胞スリーと呼ぶ)を使って細胞の培養をはじめるだろう。
だが、今日はクリスマス。運転手の俺は何をすべきだろうか?
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 椋香さん» 毎度、暖かい目でみて頂いて感謝しております。ロバート&キャロルシリーズは、キャラ設定の割にハードボイルドなお話なんですよね。かみ合わない所が俺的にはツボですが(苦笑) 椋香先生はこういう系が好みなのかな? また機会があれば楽しく書きたいです! (2015年6月7日 20時) (レス) id: e81dc0df4c (このIDを非表示/違反報告)
椋香(プロフ) - 読了しました〜。言われてしまうと、裏設定書き込んでほしくなります…。今回も楽しく読ませていただきました♪またこのジャンルにも挑戦してみてください!こんな未来にならないことを祈りつつ…。 (2015年6月7日 16時) (携帯から) (レス) id: 79a496978a (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - ふたまさん» 感想ありがとうごうごさいます(*´∀`) このお話は書き始める前から仕込んでいたネタだったので、そう言っていただけると嬉しいです。これからも頑張って書き続けます。ありがとうございました♪ヽ(´▽`)/ (2014年11月5日 22時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
ふたま(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!話が深くて超面白かったです…!書き方がお上手で憧れます(/∀\*)これからも頑張ってくださいね! (2014年11月5日 20時) (レス) id: fd0c711392 (このIDを非表示/違反報告)
ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - 感想ありがとうございます!(*^^*) 改行は縦書きはなしで、横書きは幾つか入れた方がいいそうです。改行ない方が正しいと思っていて、この作品は入れなかったのですが、最近知って修正しました。描写についてはまだ改善案があると思うのでがんばります(><) (2014年7月24日 12時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナンシー・ハジェンズ | 作者ホームページ:
作成日時:2013年9月14日 23時