【銀/魂】戦場を嫌う黒い鬼 弐【坂/田/銀/時】

チョコレートが四十五個 ページ2

貴方side



バコン。


こんな音が合うのではないだろうか。


ミツバを襲おうとしていた男は、その音と共に見事に吹っ飛んでいった。……私がフライパンで打ったからだ。


「……ホームラン!」


私はミツバを直ぐに立たせて、「食堂に行って」と伝えた。震えながらも、食堂に向かって走っていくあの子は、本当に強い子だと思う。


さっきの音を聞き付けて来たのか、山崎や十番隊の隊士が此方に向かってきた。


「ね、姐さん！！」


……向かってきたのは仲間だけでなく、攘夷浪士さんも向かってきた。


このままでは、いくら山崎や原田が強くても負傷者が出る可能性がある。

それぐらい敵さんが多いのだ。……いや、真選組を本気で潰すとなれば、それぐらいの人数は必要か。

此方が少なすぎるのであろう。


浪士たちにとっては、一番隊や鬼の副長が居ないことは好都合であり、計算通り。


……ただ、きっと私が居たのは計算外だろう。


先程吹っ飛ばし、気絶している男の刀(ｿﾚ)を持ち、躊躇なく振るう。


「っ……」


久し振りに感じる鉛の重さ。


いつまで経っても慣れない、辺りに充満する鉄のにおい。


人がモノに変わるその瞬間。


どれもが″あの時″を思い出させて、気持ちが高まる。昔の感覚に身を委ねていれば、私の周りが紅く染まっていた。


その時、十番隊の誰かがトシたちに連絡したのか、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。


トシたちが来るまで後少し。…… それまで、私は一心に刀を振るった。食堂に浪士共を近づけないようにするために。


最初は原田たちも戸惑ってはいたが、今は威勢良く、浪士共を粛清している。


……だが、やはり数が多く、長年刀を振っていなかったブランクというものがあり、私の体力が限界に近づいてきていた。


そろそろ引き上げようかと思った頃、屯所の正門から局長の声が聞こえた。


「お前ら、一人残らず討ち取れェエ！！」


その言葉に合わせて、隊士たちの「うおぉぉおおお！！！」という雄叫び。



……それからは早かった。


総悟君は一見Sっ気のある青年だが、剣をとれば周りを圧倒していた。

局長は、一撃一撃が重く他の隊士たちを導いていた。

そして、あれだけ居た浪士たちがあっという間に討ち取られてしまったのだ。


というわけで、今は浪士の後片付け中だ。こちらも結構な負傷者が出てしまったが、死亡者はいつもより少ないという。


それよりも問題なのが、私が刀を振るっていた姿を、局長、トシ、総悟君に見られたということだろう。

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