31 ページ32
職員室の窓ガラスから陸上部が見え、私はその風景をチラリを見た。
ひとみ先輩と少数の１年生がケタケタと笑い合っている。
「春原。これが過去10年分の資料な。よかったら持って帰れ」
「えっ。いいんですかぁ？ ありがとうございます」
先生が資料棚から持ってきた冊子を封筒に入れ、私はソファから立ち上がった。
「今日はありがとうございました。プリン、美味しかったです」
「はい、さよーならー」
職員室から出て階段を上って２階へ行くと、３階から微かに吹奏楽部の音がした。
その音は聞きやすくてひとつひとつの音が生きていて、高揚感のある曲。
心躍らせながら廊下を走り、自分の教室へ急ぐ。
「みなと兄！」
教室ではいつものようにカーテンが揺れ、ベランダにも人影がない。
確かにみなと兄に此処で待っていてと伝えたはずだ。
不思議に思いながらもベランダから顔を出すと、
「あれ……？」
自分の身長よりやや低いバーを飛ぶみなと兄の姿があった。
無邪気にしているようなオーラはなく、苦悶に満ちているように思える。
何があったのかと教室から出て階段を降りる。
下駄箱を通るが、靴を履き替えている余裕なんかない。そのままグラウンドへ飛び出す。
「あ……」
今度はひとみ先輩が同じ高さのバーを飛んでいた。
ひらりと葉っぱのように身軽そうな身体。
無事マットの上に着地し、バーは震えていない。
それを見たみなと兄は、「またかよ」と悔し気に眉を寄せた。
「３cmあげますっ」
２年生が駆けてきて、バーの高さをあげる。
いがみ合うような目つきと、柔らかで人懐っこい目つきが並んでいる。
「六花……？」
遠くの方に私の存在を認めたみなと兄が足を止める。
息を荒げる私とバッチリ目があい、びくっとしたような表情になっている。
「次はどっちから飛ぶ？」
「俺が先に行く」
ひとみ先輩と多少の会話を交え、ゆっくりと私の方にやってくる。
３ｍほどの距離の所で回れ右をする。
「みなと兄……？」
確かにみなと兄は私が何処にいるのか知っているはずなのに、まるで避けられているように感じる。
みなと兄が黙りながらバーを見詰めると、カーブを描き助走をつけた。
彼自身と同じ高さのバーに私は息を飲んだ。
32 みなとによるみなとのセクハラ→←30 (side みなと)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏ミルク(プロフ) - 夏ミルクです。http://uranai.nosv.org/img/user/data/b/2/7/b2771ea544ee8ee95dc498968c3fc410.jpg←画像。みなとさんちょっと可愛くなりすぎましたかね？？あぁみなとさんかっこいいよぉ！って描いてたらこうなりました！ｗｗリクエストありがとうございました！ (2016年4月12日 19時) (
レス) id: cd92f3c289 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 詩桜さん» 返信遅れてすみません。読んでいただいてありがとうございます♪ 文についてもお話についても誉めていただいて感謝です。ありがとうございました(*^^*) (2016年2月15日 18時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
詩桜 - 読ませていただきました！文才があってとてもうらやましい限りです(笑)イベントにも参加してくださって、ありがとうございました！！話にブレが無く、現実離れしているところも無くて、とても読みやすかったです！！これからもがんばってください！！応援してます！ (2016年2月15日 17時) (レス) id: d76ccfa709 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 夜鬼 神羅さん» 初めまして(o^O^o) 楽しんで読んでいただけて、レイチェルも嬉しいです！みなとと六花は善きヒロインと主人公だったのではないかと。お読みいただき、ありがとうございました♪ (2015年10月23日 21時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
夜鬼 神羅(プロフ) - キャラクターの個性がハッキリしていて、性格なども安定していたのでとても読みやすく、みなとと六花の心情もよく現れていて、とてもいい作品だと思います！読ませて下さって、ありがとうございました！！！楽しかったです！！ (2015年10月23日 18時) (レス) id: 8b627dd71d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ：https://twitter.com/seshiru777777
作成日時：2015年8月8日 21時
