形ない人 ページ14
ドアを一枚挟んだ向こう側は、いつもの光景とあまり変わらない。
今朝見たような、不気味な存在を一体か二体、見かける程度だ。
それらは人の身体に巻きついていたり、建造物に縋っているだけで何かしてくる訳でもない。
不気味なだけで、こちらが気付かないふりをしていれば、向こうもちょっかいはかけて来ないようだった。それにしては、少し様子がおかしく見えたけど。
「平日って言っても、中々人多いなぁ……」
はぁ、とため息を吐く。
誰かを探さなきゃいけない、と思っていてもこう人が多いと何も出来ない。
そもそも、宿儺様がこの世にいるとは言いきれないんじゃないか……?
ぱっと思い浮かぶ服装からして、随分と昔の人だったはず。
「もしかして、もう死んでる……?」
そう口にした時、全身の血が引いていく。
私は一体何を探そうとしていたんだろう。
姿かたちのない亡霊?そんなの、見つかるはずがない。
今日はもう帰ろう。亡霊を探したって、私の目に見えるはずがない。
何度目かのため息が出る。
全く無駄な時間を過ごしてしまった──、とレンガが敷きつめられた道をとぼとぼ歩いていると足元にかかる影に、思わず足を止めた。
何時もなら気に止めることさえしないのに、なぜか惹かれてしまう。
顔を上げるとそこにはたくさんの花が飾られている。
フラワーショップと看板が掲げられ、店の中にも色とりどりの花が並んでいる。
その中でも一際目を引いたのは、小さな鉢に植えられた植物だった。
白で縁どられた緑の可愛らしい形の葉が、特別輝いて見えて、気がつけば購入していた。
真っ白な鉢に植えられたその植物を抱えながら、私は帰路に着く。
どこかへと急ぐ人々の中で、何故か一人の少年に目を奪われた。
遠くてはっきりと顔が見えたわけではない。何故かその人が他の人たちよりもずっと色鮮やかに映る。
胸の中で、ポンっと何かが弾けた音がした。それはきっと──
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ゆず(プロフ) - 初めまして宿儺様沼にハマり、作者様の作品に辿り着きました。とても面白いですし、宿儺様との展開が楽しみです!更新大変でしょうが応援しております!! (2021年4月26日 18時) (レス) id: 9087c45e44 (このIDを非表示/違反報告)
星空の砂時計 - とても面白いですね♪ 作者さんのペースで更新を頑張ってくださいね! 私も呪術廻戦にハマり、作品を書いている者なので機会があれば何処かでお会いしましょう! *´▽`* (2021年4月18日 14時) (レス) id: a21ef6301e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さっく。 | 作成日時:2021年3月26日 8時