＊ ページ8
「……なぁに？A」
「だいすき、です」
「どうしたのいきなり」
そう言ってうらた様は意地悪そうに笑みを浮かべる。
そんな表情もどこか恍惚で、もっと近くで見ていたいとうらた様の頬に手をかける。
「だいすき、だいすきです、うらた様、」
「ふふ、俺もだよ」
「ほんとに？」
「もちろん。大好きだよA」
うらた様はそう言って私に口づけをする。
甘くて幸せな時間は一瞬で、私は もっと、もっと欲しい とせがむのだ。
するとうらた様は満足そうな顔になり、今度は深くて身も心も全てをかき乱していくようなキスを私にしてくれる。
私も、その幸せに浸りながら目を瞑った。
私の全ては、あなたのもの。
あいしてます、うらた様。
***
彼女との口づけは想像以上に甘かった。
一度その味を知ってしまうともう一度、とまるで毒に浮かされたように欲しくなってしまう。
それを彼女から求められたのなら、これ以上の幸せはない。
Aを最初に見かけたのは、1週間ほど前のことだった。
学校帰りに友達と歩いている姿を、たまたま見つけて堪らなく欲しくなった。
その穢れを知らなそうな顔は、俺に一体どんな表情を見せてくれるんだろう。
キスをしたら、どんな声を俺に聞かせてくれるんだろう。
そんな事を思いついてしまったなら、もう戻れなかった。
Aを攫い、当然のことながら慌てる彼女に魔法をかけた。
今までの記憶を消し、俺だけを望むように。
そうして今、彼女はこんなにも俺とのキスに気持ちよさそうな表情で長くて美しい睫毛を伏せている。白い頬にかすかに滲む紅が色っぽく見えてしまう。
( なぁ、お前のせいなんだよ全て )
お前を見るたびに俺の心はこんなにも夢中になってしまう。
魔法を使ってでも、俺のものにしたいと望んでしまう。
そしたらどうだ。
深い深い海の底に沈みこんでいくように、お前を好きになっていって。
溺れていく、お前に、お前の全てに。
もう戻ることは出来ない。お前の全てはもう、俺のものなんだ。
「…っ、うらた、さま、」
ああ、最高だ。
もっと、もっと、俺を求めろ。
俺がお前に溺れるように、もっと俺に溺れていけ。
魔法が解けたとしても、俺なしでは生きれなくなるように。
愛してるよ、A。
これからずっと、俺に溺れ続けていてくれ。
この甘美からはもう逃げることは出来ない。
それは永遠に。
fin.
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