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昨日必死で走った道をゆっくり歩く。途中でコンビニによってハイボールの缶とチューハイを数本買って大人しく家に帰る。
「ただいま、」
「Aチャンおかえり〜。ってどしたん顔真っ青やん、体調悪い？」
昨日の彼とは全く違い笑顔で迎えて、私の体調まで気遣ってくれた。センラさんの件がなければお酒飲んで仲良くベットで寝てたかもしれないけど今回ばかりは。
「…ね、志麻くん」
「なーに、Aチャン」
「今日の朝とお昼前、どこにいた…？」
一向に合わない目線に彼の前に移動する。
腕を引っ張って私の位置を主張する。
「朝はAチャンがはよ家出て仕事行くって予想出来てたから、Aチャンがいつも通る道のコンビニにおったよ。跡つけてったら、なんか頭黄色いやつと楽しそうに話して並んで会社行くし。」
「昼前はAチャン外に食べに行かんかな〜って待ってた。そしたら朝の金髪男がるんるん歩いとったから、殴ってん。」
「だって俺のAやろ？お前の横は俺だけやろ、」
私を壁に押し付けて独占欲をさらけ出す。顔は私の胸元に寄せられてて見えないけど、じわじわと暖かい何かで濡れている感じがする。
「…別れるなんて言わんで」
「な、何で急に別れることになるの！？別れないよ、」
「ほんま？別れへん？」
ガバッと顔を上げた志麻くん。綺麗で大きな瞳が潤んでてやっぱり、泣いてたんだね。
「うん、本当。私志麻くんのこと好きだから。」
「…じゃあ俺のお願い聞いて、」
「俺から離れんといて、ずっと一緒に居って、他の男と話さないで…」
普段の彼からは考えられないような弱く細い声と涙目には勝てない、でも仕事もあるし…
「できる限りになっちゃうけど…それでもいい？」
「何言うてるん、一番は俺やろ？俺以外の一番は要らんやろ。…やっぱりこうするしかないんやね、」
カチャリ。彼も、私も黙って静かな部屋に物音が響いた。私の首元からだった。
「もう家から出さへん。仕事は俺がする。Aチャンはここで俺の帰りを待っとって。」
今日一番の笑顔で私の頭を撫でている志麻くんには、さっきまで泣いていた欠片はない。
「鎖はどんくらいの長さがええかな…玄関までは届かんように、いや、でもおかえりって言って欲しいし…」
「ま、後で一緒に考えよか。Aチャンがお酒買うてきてくれたし久々に二人で飲も。」
もう外には出られないのだろうか。
出会った頃には戻れないのだろうか。
どこから間違ってしまったのか。
…何も分からない。
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