▲不自由と愛に満ちた籠 ページ28
※暗め
カチカチと時計だけが音を立てる部屋で目を閉じる。だらんと弛緩した指先からは体温が抜け落ちていくのを感じた。
玄関のドアがガチャと音をたてて主の帰宅を知らせる。間もなくしてリビングに顔を出したエーミールさんは疲れた瞳に私を映すと静かに歩み寄ってそっと抱き寄せた。
「お疲れ様です」
「ありがとうございます」
夜風に晒されて冷えた体が私の体温と溶け合って、やがて温もりに変わる。エーミールさんの肩越しに天井を眺めているとかけられる力がより強くなった。
「Aさんがここで待っててくださると仕事に身が入るんですよ」
「え、私が……？あ、ありがとうございます」
エーミールさんがどんな顔をしているか、ここからは見えない。けれどきっと柔らかい顔で、独り言ちるように呟いた。胸の中の暖かいものを伝えるため、エーミールさんの背に手を回そうとしたけれど腕ごと閉じ込められていてそれは叶わなかった。
一人用にしては広い部屋に一人取り残されるのは少し寂しい。主であるエーミールさんは多忙らしく朝早くから留守にすることも多い。それでも、彼は毎日遅くなってもちゃんと帰ってきて、ハグをしてくれる。
この時間が一日の中で一番好きな時間だった。
「……？何か、いい匂いがしますね」
「あ、エーミールさん疲れてるかと思って……料理して、みたんですけど…………」
迷惑でした？と首を傾げるとエーミールさんは嬉しそうに眉を下げた。
「いいえ……態々ありがとうございます。せっかくですし、すぐにでも食べましょう」
「お口に合うといいんですけど……」
「貴女が作るんですから美味しいに決まってますよ」
腕の力を緩めると名残惜しそうにキスを一つ。そのまま指を絡めとるとそのままテーブルへ腕を引かれる。テーブルについて終始笑顔を崩さずにフォークを動かすエーミールさんに、私はこれ以上無い幸福を覚えた。
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野菜(プロフ) - 冬のみかんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！これからも「好き」と言っていただけるようなものをお届けできるよう2人で頑張りますね！ (2022年1月28日 9時) (
レス) id: 27822127af (このIDを非表示/違反報告)
冬のみかん - 初コメ失礼します。いつも見させていただいています！本当に好きです！これから続編の方でも頑張ってください！応援させていただきます！ (2022年1月28日 3時) (レス) @page2 id: b5169bd6bc (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - 奏さん» コメントありがとうございます！イラスト素敵ですよね！お話読んでくださってありがとうございます。頑張って制作して参りますので気長にお待ちください……！ (2021年10月29日 21時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - ぇイラストかっこよ。お話だけでも最高なのに!これからも作者様のペースで頑張ってください! (2021年10月29日 19時) (レス) id: 00420758bc (このIDを非表示/違反報告)
野菜(プロフ) - ラグさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！ (2021年10月9日 19時) (レス) id: 5520a4b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
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