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「お待たせしました」
「わぁ…………」
魅惑的な湯気を立てる紅茶と共に前に出されたのは可愛らしいジャック・オー・ランタンのケーキだった。エーミールさんらしいオシャレなお皿に乗せられて金色のフォークもそっと置かれる。その顔は柔らかく微笑んでいて、張っていた肩から力がふっと抜けた。
「えっと、これはまさか……」
「ええ勿論私が作りました。ハロウィンは子供の行事とはいえ貴女が楽しみにしていることは知ってましたから」
「エーミールさんすごい……！ありがとうございます」
食べるの、ちょっと勿体ないな。そんなことを思いつつ容赦なくフォークを突き立てる。ものの数回動かせば、カボチャのお化けはあっという間に影もなく崩れて胃の中に収められた。
「ご馳走様でした。美味しかったです！」
「それは良かったです。じゃあAさん」
「はい、なんでしょう？」
「私も、トリックオアトリート」
新月の次の月も顔負けなほど、細く甘く瞼が伏せられる。今日という日によく似合う、背筋を撫ぜるような視線。それが真っ直ぐこちらに向けられていて、一度忘れた緊張が肩に戻ってきた。
「あー、えっと……エーミールさんは仮装してないからダメ、ってことにはなりませんか……？」
「Aさんは武器商人の仮装なんでしょう？私も同じ格好をしてるじゃないですか」
「そ、れはそう、なんですけど…………」
お菓子、用意してなくて…………
我ながら哀れな声がへぇと怪しく笑うエーミールさんの声に溶けて消える。目の前にいるのは正しく"恐ろしい武器商人"でチンケな自分のコスプレが酷く可愛らしい物に感じてきた。
「Aさんは詰めが甘いんですよ」
「いやまさかエーミールさんがハロウィンにそんな乗り気とは知らなくてっ……」
「"私はイタズラでも手を抜きませんよ？"」
「くっ…………！」
よし、逃げよう。
エーミールさんの運動神経なんてたかが知れている。
本気で逃げればきっと、多分、おそらく。
何か本能的な衝動に駆られて、椅子を倒す勢いで立ち上がった。
「先に仕掛けたのはそちらでしょう」
逃げるなんて許しませんよ。
ぞくぞくと悪寒の走る冷えきったこちらとは対照的に暖かい手が手首を掴む。
私は石のように固まって、その整った顔がスローモーションで近づいて来るのをただ受け入れることしか出来なかった。
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野菜(プロフ) - 冬のみかんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！これからも「好き」と言っていただけるようなものをお届けできるよう2人で頑張りますね！ (2022年1月28日 9時) (
レス) id: 27822127af (このIDを非表示/違反報告)
冬のみかん - 初コメ失礼します。いつも見させていただいています！本当に好きです！これから続編の方でも頑張ってください！応援させていただきます！ (2022年1月28日 3時) (レス) @page2 id: b5169bd6bc (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - 奏さん» コメントありがとうございます！イラスト素敵ですよね！お話読んでくださってありがとうございます。頑張って制作して参りますので気長にお待ちください……！ (2021年10月29日 21時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - ぇイラストかっこよ。お話だけでも最高なのに!これからも作者様のペースで頑張ってください! (2021年10月29日 19時) (レス) id: 00420758bc (このIDを非表示/違反報告)
野菜(プロフ) - ラグさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！ (2021年10月9日 19時) (レス) id: 5520a4b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
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