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迅が『スーパーマーケットで泣いている少女に殺される』という前代未聞な事件を起こしかけたとき、救世主は現れた。その人物はワインボトルを三本ほど抱きながらいつの間にか小南の横に立っており、乱心中の小南に声をかける。
「こら桐絵ちゃん、悠一君死んじゃうよ」
「！ Aさん！」
「げほっ、ゲホゲホっ、はぁ、はぁ……遅かったね」
急に放されて咳き込む迅の背中を擦りつつ、Aはワインボトルをカゴの中に寝かせる。「けっこう『見てて』ね」と苦笑気味に見せられた酒がどのくらいの価値のものか迅にはわからなかったが、Aの顔を見るにそんなに安いものでもないことがわかった。
「そんなにお金あるの？」
「ははは、今日は忍田さんにお小遣いをもらってるだけだよ。
林藤さんめ、パシりやがってー、とここにいない先輩を毒づくAの服の袖を、クイッと引っ張る小南。赤くなっている目を目の前の菓子が並べてある棚に向けて、「買って」アピールだ。さっそく甘えることにしたらしい。
Aはそんな小南ににっこり笑って、「もちろん好きなのを買っていいよ」と了承した。ぱあっと花が咲くような笑顔を浮かべる小南は、三種類のお菓子をカゴに放り込んだ。ついでにAもつまみを放り込む。迅も便乗して好きな揚げせんべいを入れた。
Aは笑った。
「今日は桐絵ちゃんと悠一君が仲良くなったお祝いだね」。
その言葉に、迅はもう一袋と思って入れかけた揚げせんべいを静止させる。Aも小南も首を傾げ、「？ 入れていいんだよ」「？ さっさと入れなさいよ」と口々に言う。しかし迅には、それよりも注目したいことがあった。
「それって……全部、見てたってこと？」
「あっ！」
小南もそれに気づき、声を上げた。Aはなんだそんなことか、と軽く笑い飛ばす。
「最後の方だけね。いい機会だと思って」とAは言った。「二人ともいつまで経ってもギスギスしてただろ」と付け足して肩を竦めるAに、迅はこれ以上ないほどの強い怒りと羞恥を覚える。
「……おれ、Aさんのそういうとこ、きらい」
「……あたしも」
肩を震わせてなんとか絞り出したその声に、なんと小南までも同調した。小南の顔は真っ赤に染め上がっている。Aは自分の犯した罪に覚えがないのか、「なんでぇ？！」とおろおろしている。
奇しくも、それは迅が初めて見たAの動揺している姿だった。
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ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
