イナズマイレブン～脅威の侵略者編～第7巻 (ページ49)

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（３２７）黒い建物でページ49

知らない土地で別行動を取って、何かあってからでは遅い。

……追わないと。

途中から、2人は自然と裏路地へ足を運んでいった。

薄暗いのはどの時間帯も場所も同じなんだな、なんて呑気な事を思っていると、いつの間にか一般人が行き交う通りとはまた違った、煌びやかな大通りに出た。

歓楽街、とでも呼ぶべきだろうか。

大人な雰囲気だけが漂う、子供の自分だけが浮き出て溶け込めていない疎外感がある。

歩道には、コンクリートの地面に座りこんで酒を煽る男。下品な笑い声を発している大人。……いや、その中には同じ学生くらいの人もいた。

なるべく見ないようにして、再び聖羅達に目を戻す。

数件ほど素通りしてから、ある店に入っていくのが見えた。

目立たない所に小さな看板が付いた黒い建物で、「Ater Acus(アーテル・アクス)」と書かれている。

あまり人がいなさそうだったが、そっとドアを開けてみる。

・

中に入ると、小気味良いテンポの音楽に出迎えられた。

さっきの大通りみたいな人達が屯ろするような場所とは空気が違う。

店の外観から想像するより広く、薄暗い照明の中、数人がソファーに身を沈めて雑誌を呼んだりひそひそ喋ったりしている。

左側に受付、右側にバーのカウンター、奥にある扉は、「Treatment Room(施術室)」と書かれた札が下げられている。

カウンター側の壁には黒で描かれた絵のような物が貼られていて、、中には小さな額縁に大切に収められている物もあった。

再び聖羅を探そうと視線を彷徨わせながら奥へ進んでくと、カウンターの客イスに脚を組んで両肘をつく黒パーカーの人物を見つける。

円堂「いた……！」

さっきの紫髪の青年はカウンター越しに飲み物をシェイカーに注いで振っている。

その手付きは中々、様になっていた。

グラスに移して聖羅に差し出し、しばらく会話してたら青年がタバコを1本咥えた。

次にズボンのポケットを探ったかと思いきや、自身の体の至る所に手をポンポンと叩き始めた。

大方、ライターか何かを無くしてしまったのだろう。どうやら少し抜けた所がある人のようだった。

青年が困ったように後頭部をポリポリと掻けば、フードをかぶっている聖羅が手招きするように人差し指をくいくいっと動かした。

意外そうに青年が目を少しばかり瞠ったが、ふっと困ったように笑って目を瞑り……タバコを咥えた口を聖羅のかぶったフードの中へと寄せていた。