お姫様抱っこしてください【マギ】 (ページ6)

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第6夜ページ6

「そういえばAって金属器使いでしたね」

「どうしたジャーファル、急に」

「いえ、ふと思い出しまして」

　ジャーファルは書類に目を通しながらシンと会話する。今頃彼女は何をしているのだろうか。

面白い薬草が見つかったと言っていたから新しい薬を調合しているかもしれないし、またマスルールと一緒に日向ぼっこをしているかもしれない。

(※女子会(ガールズトーク)してます。)

　日向ぼっこ…マスルール……お姫様抱っこ…。

ダメだ、つい先日の出来事が頭から離れない。何とも思ってない感じで接していたが、頭の中はずっとスペースキャット状態だった。

仮にも好いている女性が、男性にお姫様抱っこされていたのだ。しかも本人が頼んだと言う。

なんで？？？

(※本人はちゃんと役者たちを見て憧れてと言っていました。)

「あっ、ジャーファル！インク、インク！！」

「えっ？ ……あ、あぁっ！！！」

考え事をしていたせいか、筆が止まり、そこを中心にインクがじわじわと滲んでいた。おかげで、羊皮紙のど真ん中に丸い黒い点が出来上がってしまった。

幸い契約書や誓約書などといった大事なものではなく、シンドバッドの尻拭い、謝罪の手紙だったためやり直しがき……いや、自分で書け。

「はぁ…まったく捗らない」

「Aか？」

「なぜ仕事が捗らないと言っただけで彼女が出てくるんですか？ ───それよりシン、残りの書類今日中には片付けてくださいね」

図星を突かれピリピリするジャーファル。仕事一筋だった彼が彼女にほの字なのだ。余計なことを言うんじゃなかったとは思いつつもシンは楽しんでいた。

「Aは可愛いからなあ」

「……シン」

「たまに抜けてるとこもあるが、気は利くし面白い」

「…………シン」

「おまけに胸も」

「眷属器…」

「あっ、ま、待て、調子乗った、ジャーファルくん落ち着いて…ッ」

「双蛇鏢(バララーク・セイ)!!!」

　ぎぃやあああ―――――――！

シンドバッド王の汚い叫び声が王宮内に響き渡る、響き渡る。

シンドリアは今日も平和である()