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笑って少女11 ページ17

過去。



『銀時、まだここにいるの?』

『…ほっとけよ』

『はいはい』

『……』


夕暮れ、神社の石段に1人座るのは銀髪の少年。

不貞腐れたように拒んだ坂田は
言葉に矛盾して隣に腰を下ろした少女に
鬱陶しいとでも言うように訝しげな表情をする。


『…』

『…』

『なんだよ』

『ほっとけっていった癖に
自分から話しかけてくるんだ?』

『なっ_』


得意気に微笑んだ少女は夕陽に照らされて
楽しそうに嬉しそうに笑う。

不機嫌に、顔を背けた坂田に
少女は困ったように眉を下げて、つい先ほど
登ってきたばかりの石段を数段降りた。

正面から照らしていた夕陽、
自分にかかる人影で坂田はその少女が
自分の正面にいることを理解するも、
その人影は一向に、何も一言も発さない。

恐らく沈黙はそう長くは続かなかっただろう。

頭をかきむしって渋々、といった表情で
顔をあげた坂田は予想通り、夕陽を背にして
多分こちらを向いている少女を睨む。

夕陽は、
少女を飲み込んでしまいそうなほど大きい。

少女は、
夕陽に飲み込まれて消えそうなほど小さい。

眩しくて目を細め、少女に目を凝らした坂田は、
少女の大人ぶった優しい笑みに胸を高鳴らせた。


『帰ろ、銀時。』


遠くにいるように思えたその少女が
伸ばしてきたその手を、
坂田はため息とともに取る。

しっかり握りしめた。


『ふふふ、帰ったら仲直りしてね』

『…わぁーってるよ』


あいつが謝ればな、という言葉を飲み込んで、
石段をまた楽しそうに駆け降りる少女を見やる。

ここで仲直りなど絶対にしない、と言えば
少女がやや怒ったように見せながらも
困ったように微笑むのは分かっているから。


『早く帰ろ、夜は暗くて危ないから』

『…別に平気だし』

『馬鹿ね、
万が一にも拐われたりしたらどうするのよ』


拐われるなら十中八九、少女の方だと
坂田も、その仲間たちも口煩く言うのだが、
いつもその言葉は少女に届いてはくれない。


『銀時なんて特に可愛いんだから。
喧嘩もいいけど家出も寺子屋の中でしてよね』

『…』


家を一歩も出ていないではないか、と
坂田は反論しようとするも
隣の少女の優しい微笑みにまた口をつぐむ。


『あ、皆揃ってる、ただいまぁー』


手を引っ張り、駆け出していった少女は
坂田の恨めしそうな視線を気にせず微笑む。


『ただいま、先生』

『お帰りなさい、A』


また少女が可愛らしく笑う。

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時

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