冷たい溺愛カップル【江戸川乱歩】 (ページ10)

今日:1 hit、昨日:9 hit、合計:72,789 hit

迷宮解読9 ページ10

・

呼び出された。

とは云え私に交通手段は無いので結局迎えに来て貰う羽目になるのだが。

「有り難う国木田さん」

「本来であればヘリを運転出来る谷崎が送迎させて頂くのですが」

「ヘリ…？」

空を飛ぶヘリコプターで合っているのだろうか。

私の送迎に？

「生憎、私と賢治しか送迎出来る者がおらず申し訳ありません」

「賢治くん…免許持ってたかしら」

「怪力の異能力を持っています」

「えぇ、聞いたことは有るわ。…え？」

車椅子ごとぶん投げられると言われたのだろうか。

律儀に法定速度を守って進む車内に沈黙が訪れる。

二分の一で私は空を舞うところだったらしい。

やれ、何処かのマフィアより物騒である。

「いつも乱歩がお世話になっているようで」

「いえ、私なんてとんでもない。乱歩さんあってこその探偵社ですから」

「今の武装探偵社は皆がいるからこそでしょう？」

乱歩が背中を、全体重を預けられるのは皆が支えているからだ。

其れは乱歩だって分かっている。

分かっているから全力で威張っているのだ、多分。

「所で、呼び出された用件を聞いていないのだけど」

「間も無く到着しますので」

「到着…あら、此処は」

「ご存知なのですか」

「無理に敬語を使わなくとも良いのよ」

ご存知も何もつい数日前に来たばかり。

車窓越しに喫茶店を見やれば、店の前で睨み合う二人＿太宰さんと中原さん、其の奥にぶんぶんと手を振る乱歩の姿が有る。

何が如何なっているのだ。

車を降りると直ぐ手前にもう一人いた事に気が付いた。

「敦くん、貴方もいたの」

「状況説明をしろ敦。何故電話で聞いた状況よりややこしくなっている」

「えと、あのですね！」

かくかくしかじか。

聞けば事の発端は此の喫茶店で起きた殺人事件らしい。

乱歩が担当する運びになり其の付き添いには敦くんが選ばれた。

現場に着いた二人に近くの河川を流れていた太宰さんが合流。

何故か乱歩が私を呼べと言うが連絡先が分からず探偵社に連絡。

探偵社に残っていた社員から送迎が出来る国木田さんが動き私を連れて合流。

私たちが到着するまでの間に、店を気に入っていると言う中原さんが来て太宰さんと言い争いになり今に至るらしい。

「中原さん、お疲れ様です」

「ぁ？あぁ…お疲れ様です」

「中也ったら動揺して変な顔ー」

「んだと？！」

「太宰さんもお疲れ様です。良い天気ですね」

「はいAさん。一人で死ぬには惜しい快晴ですよ」

一人で、ね。