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迷宮解読28 ページ29




髑髏を与謝野さんが鉈で葬り、異能特務課の新人エージェントが手柄欲しさにAを利用しようとした事まで調べがついた。

閉鎖病棟の地下にある扉を開ければ、政府の極秘情報が手に入ると云う出鱈目に踊らされていたのだ。

そして全員が仲間よりも抜け駆けしようと早く来たところを僕らに捕まった。

今も、情報の入手経路は襤褸服に鬼の能面を付けた男だとか言って、そんな目立つ男がいるかと国木田に絞められている。

隣で泡を吹いているのは与謝野さんが治療した男で、其の隣で壁にめり込んでいるのは賢治の仕業。

後は刃物を振り回して最後まで抵抗している男。

しかし_

「来るなぁあっ」

「ちっ、場所が悪い」

思わず舌打ちが出る。

追い詰めたのはあの行き止まりの壁。

骨の山は変わらず壁際に残っていて、けれど僕らに必死な男は気が付いていないようだ。

「如何しますか乱歩さん」

如何もこうも。

「あの壁には近付けない」

髑髏が散り際に放った言葉。

此の壁は触れれば忽ち瓦解する
其れは詰まり、触れれば壁の向こうにいるAが戻って来られなくなると云う事。

太宰の『人間失格』で有れば尚更そうなる。

僕らが遠巻きに足を止めた事で幸い犯人の足も止まった。

だが残り数歩、後ろに下がれば背中が壁に着いてしまう。

「俺が『細雪』で先に壁を創ります」

「待て谷崎_」

何か、Aが、来る。

前に出掛けていた谷崎の袖をめいっぱい引っ張る。

空気を揺らす衝撃と閃光。

二人して尻餅をつくと目の前を花札が掠めていった。

大量の花札が吹き荒れる風の中心に立つのは、裂けた服から傷だらけの肌を露出させるA。

僕を見てあの熱量を孕んだ瞳で笑う。

弧を描く赤い唇が僕を呼ぶ、其の前に。

「Aっ」

後ろだ、といつもなら言わなくても通じる。

けれどAは風を終息させるとぐったりとして息を吐いた。

不味い。

「乱歩、」

其の男たちは誰、って今後ろにいる男の仲間たちだ。

僕らの顔を見て完全に気を抜いていたAが口を塞がれて目を白黒させる。

「_待て」

飛び出そうとした敦を止めたのは、何か叫ぼうとした男よりも早くAの目に強い意思が宿ったからだ。

再び花札が吹き荒れて今度は巨大な蛙が出現する。

あっと言う間に男を絞め落とした蛙。

無事なら良い、が。

「A」

そんな異能力は知らない。

親しげに呼ぶ男の名も知らない。

君はいつも、何も言わない。

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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!超面白いです!思わず一気読みしちゃいました!更新楽しみにしてます! (2022年2月6日 2時) (レス) @page47 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2021年5月16日 19時

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