第2話 ページ3
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「ポート、マフィア」
海が近いんだろうか。
繰り返した私を無言で見つめている。
洒落た帽子と陽色の髪、何より空色の眼がとても綺麗な男は鋭い目付きで私を精査している。
「あのビルに入ってた組織はポート・マフィアを裏切った。一人残らず報いを受けてる」
「じゃあ私が生きているのは、そうでないと判断されたからですね」
これはえらいことになったぞ。
窓もなければ、時計もカレンダーもない。
見張りらしき人が一名、足元の方の扉を守っているがかなり遠い。
この拘束帯が如何に強力であると云え、この男が相当な実力者であるということは間違いない。
男にしては小柄な方だが、体は鍛えていそうだし何かもっと、別の_
「手前も異能力持ちか」
「…其れか」
「あァ?」
「貴方の異能力は、強いんですか」
空色が丸くなった。
すぐにまた真剣な目付きに戻る。
「取り敢えずスパイではなさそうだな」
「疑惑を否定したいのはやまやまですが証拠がありません」
そしてお気づきだろうか。
まだ私は寝たままなのだ。
「差し支えなければ体を起こさせて頂いても?」
一度意識してしまうと拘束帯が邪魔で仕方がない。
「なんなら眠らせてから外して、手錠か何かに変えて頂ければ」
「随分と落ち着いてるな」
「慌てふためいてどうにかなるんですか此の状況」
落ち着いてなどいない。
早めに諦めているだけだ。
「分かった。その拘束は外してやる。妙なマネはすンなよ」
意外にも優しい。
自由になった腕を真上にぐん、と伸ばす。
勢いよく振り上げたからか、扉付近で待機していた黒服の銃口が重厚音とともに此方を向いた。
「あの、ところで」
「ちったぁ動揺しろよ…」
「この場所なんですけど」
手枷を嵌められた手で頬杖をついて、微笑んだ。
「
「__」
「私は貴方以外の誰に発見されたんですか?」
そして。
「今日は、
衝撃が全身を襲う。
受け身も取れず、壁に強かに打ち付けた。
「ぁぐ」
空気を吐き出した喉を、革の手袋が締め付ける。
足が床に触れるか触れないか。
酸素を求めて喘ぐ私に、鋭いナイフの切っ先が突き付けられる。
「手前、何者だ」
「…ぅ」
強い力に弾かれるその一瞬、見えた光が異能力なのだとしたら。
私はここで笑ってやる。
勝利の笑み。
「…ぅそ、つきですね」
嘘を見破る能力。
其れが私の、異能力。
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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時