双黒に嘘をつく【文スト】 (ページ13)

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第12話ページ13

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類は友を呼ぶ、とはこういう時に使うのではないだろうか。

美形の周囲には美形しかいないのかと感心の溜め息を思わず吐く。

「麗しい御嬢さん、こんな蛞蝓ではなくどうか私と心中してください」

「…丁重にお断りします」

芝居がかった様子で長い足を折り膝まずく。

白魚のような手で両手を握られ、鳶色の目が真っ直ぐに私を射抜いていた。

癖のある柔らかそうな黒髪、造られたかのように整った顔、スタイルのいい長身に長い足。

正しく容姿端麗、美人だと思った。

「私は太宰治。貴女の名前を聞いても？」

「無視しとけ。青鯖に関わるな」

青鯖と云うのはこの美人のことだと理解して、時既に遅しと呟く。

キラキラと少年の様に目を輝かせていた太宰さんが、悪い笑みを浮かべた。

「五大幹部の一人が白昼堂々女連れだなんて、どういう風の吹き回しだい？」

「ほぉう？手前にしちゃあ随分と間の抜けた問いじゃねェか。そのすっからかんの頭をとっとと飛び降りて克ち割ってきたらどうだ？」

「常日頃の私は賢いって褒めてるのかい？中也に褒められても虫酸が走るのだけど」

「俺は手前と同じ空間にいるってだけで最ッ悪な気分なんだよ！」

「奇遇だね中也。ここで気があったが100年目、その窓から飛び降りて死んでくれないかな」

「それは此方の台詞だッ！」

中也の軸のぶれない綺麗な回し蹴りが空を切る。

完璧なタイミングで間合いをとってふわりと回避した太宰さんがまた挑発をして、煽っている。

「座っているときは少しは背が伸びたかと思ったのだけど、胴が伸びて足が縮んだだけの様だね」

「んなわけ＿あるかァッ！」

「あらあら…」

すっかりノせられてしまっている。

こんなに暴れて店は対応しないのだろうか、と視線をさ迷わせると、店員さんに頭をぺこぺこと下げる青年の姿を捉えた。

可哀想なくらいおろおろとしている。

「だ、太宰さん、寄り道してるとまた国木田さんに怒られますよ」

「じゃあ敦くん、先に言って伝えておいて呉れ給え。"最小"幹部に絡まれてる、と」

「最小…？」

「人虎ッ巫山戯た事言いやがったら手前から殺すからなッ！」

「ひぃっ」

少し関係が分かったような分からないような。

「災難ね」

「え…うわっ、」

勢いよく飛び退くものだから、椅子が幾つか倒れて転がった。

死角から行ったわけでもないのに気づかなかったのだろうか。

「終わるまでお茶してましょうよ」

美味しいわよ、と餌付けを試みた。