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第13話 ページ14





「あ、でも…」

「お腹は空いてない? 注文し過ぎて食べられないの」

人助けと思って食べてくれないかな、と宝石のように果物が飾られたタルトを差し出す。

甘いものが苦手だとかそういうことはなさそうで、少し迷ったあとに照れ臭そうに正面に腰を下ろした。

「うわぁ…いただきますっ」

「どうぞ。美味しい?」

「はいっ、とても」

「良かった」

この人虎が、芥川くんの毛嫌いする異能力者。

「時間は大丈夫?」

「大丈夫…じゃないけど、僕一人では解決できないから」

「そうなの」

特に興味もないので聞くのを止め、視線を乱闘に向ける。

薄曇りの天気のせいか、喫茶店のテラスには誰もおらずのびのびと動ける空間がある。

そこで太宰さんに誘導された中也が椅子やテーブルを薙ぎ倒しながら跳ね回っていた。

「あの、」

「うん?」

「いや、怖くないのかなって」

「…そうね」

怖いか怖くないか、なんて。

「私はよく知らないけれど、仲が良さそうだなと思って」

打てば響くような悪口の応酬と息がぴったりの乱闘。

私は何も知らない。

だから勝手な考えで結論を出した。

「喧嘩するほどなんとやら、男の子は拳で語らう生き物でしょ?」

テラスの方で太宰さんが吹き出した。

突如として笑い出したのを、中也は気味が悪そうにして動きを止める。

正面では、口許にタルト生地をつけたまま人虎が目を丸くしていた。

「ぼ、暴力はあまり…」

「女の人の口が強いのは、腕力がない代わりなのよ?」

クスクスと笑いながら席を立つ。

彼らが戻ってきていた。

「だから、女の人の方が強い(・・)の」

「成る程…?」

意味が分かったのかどうなのか、それでも強い女の人には心当たりがあるらしく頷いている。

「なら手前は女じゃないな」

「はっ倒すよ?」

「は?」

「あら失礼」

恐らく冗談のつもりだったのだろう。

ノータイムで切り返したものだから鳩が豆鉄砲を食らったように停止してしまう。

だが今のは中也が悪い。

「ぷっ…くくく、」

「…うるせェぞクソ太宰!」

「八つ当たりはやめなよ、あっははは」

一人、人虎だけが戸惑っていた。

「あれ、え? 知り合い?」

「…行きましょうか中原さん」

夜、闇の刻が来る前に。

冷静さを取り戻した中也が軽く顎を引いて帽子を被り直す。

後に続いて店を出る私を見て、狼狽えている人虎に微笑んだ。

「楽しかったわ、ありがとう」

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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時

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