・ 中原side ページ20
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「………ぁ、…」
「目が覚めたかい?」
「……此処は」
「花屋の二階、突然暴れて倒れたあんたを
店主が此処に運び込んだのさ」
「…何で手前が此処にいる」
武装探偵社、女医の与謝野晶子。
此処は_
「Aは如何した!」
「大声出さなくても聞こえてるよ」
部屋に入ってきたAは
顔をしかめて不機嫌さを隠そうともしていない。
其の姿を見て、見て、見て、俺は_
「しゃんとしろよ幹部様」
パァンッと小気味良い音が響く。
頬を両手で挟まれたのだと気付いて、
Aが俺の上に跨がっているのだと分かって。
「……な、」
「溢れた
与謝野ちゃんの異能力でリセットされてる。
さぁ、頑張って情報を有るだけ吐きな。
あは。心配しなくて善いよ。
私はそう簡単に殺されないからね」
「待て、待てよ。俺は一体」
「あんなに激しく『や』ったんだ、
………………責任、取って呉れるよね?」
細い指が頬を伝い、首を、胸骨を、なぞっていく。
其の間も、深い水色の瞳は俺を捉えて離さない。
鼻腔を擽る花の___椿の強い匂い。
「…お前、其れ、何日目だ」
「気付いちゃった? 其の話は悪いけどまた後で。
与謝野女医、有り難う御座いましたわ。
皆様に宜しくお伝え下さいまし」
耳元で囁いてから、彼女は身を引いて微笑む。
見送りに部屋を出ていく後ろ姿が見えなくなって、
俺も身体を起こした。
植木鉢を蹴り飛ばした所までは覚えている。
言い様の無い高揚感と抑えられなかった衝動。
「……『曽根崎心中』か」
「そういうこと。ねぇどんな気持ち?
"最初"は幾つも有るけど"最期"は一つだもんね。
矢っ張り愛する人を独占したい?
死んでも君は僕のモノだとか、
一緒に死んで一つに成ろうだとか、
三途の川も二人で渡れば怖くないだとか考えるの?
私としては心中から生還した中也に
物凄く興味が有るんだよ。ねぇ、教えて?」
意識すると更に分かる。
濃厚な椿の、咲き急ぐ花の濃密な死の香り。
癒えない傷と不自然な記憶喪失。
「太宰の野郎に異能力は効かねぇ。
なら如何して_厭。
……手前ら、何企んでやがる」
にっこりと胡散臭い笑みを浮かべる
目の前の女は、静かに口を開いた。
ラッキーアイテム
名も知らぬ人からの微笑み
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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時