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「遊戯?」


「あんたが勝ったら私は消える。


分かりやすくて善いじゃァないか」


眉を潜める私を、女は笑う。


転生した私は此の世界の主役で、

誰からも愛される美しい姿に成ったと云うのに。


私の居場所はこの女に盗られていた。


万能の異能力『九十九物語』、

対して人を二人殺すだけの『曽根崎心中』。


私が奪い返す方法、愛される方法、

彼女と『場所』を入れ替わる、

世界が正しく在る為の方法、其れは唯一つ。


「私がただ消えるだけでは

駄目だとは分かってるんだろう?


なら、悪い話じゃないと思うがね」


『曽根崎心中』は"感染者"が

"自分を愛する人"に傷付けられる事で

双方に絶対的な死を与える。


『九十九物語』のひとつ『恋椿姫』は、

周囲の花草と共鳴し不老不死に成る能力。


逃れられない死と不死がもたらす特異点。


それを利用するしかない。


「期間は『曽根崎心中』の発動から七日」


『恋椿姫』は日を追う毎に其の香りが強くなり、

盛りを迎える発動から七日目、

夕暮れと共に身体は花弁となり散り逝く運命。


その時に文字通り、存在が消える。


世界がその存在を埋める前にとって変わればいい。


「私は発動したその日に探偵社を辞める」


今ここで女にウヰルスを感染させ、

『恋椿姫』の状態で心中してもらう。


二人が死ぬことが『心中』だから

片方が不死の場合はどちらも死なないと同義。


溢れた好意(・・)はそのまま維持され、

女が消えた瞬間に、私に向けられるだろう。


つまり、愛されるヒロインになれる。


探偵社をやめるのなら裏切られる心配もない。


『九十九物語』は其の能力の強さから

制御が難しく、発動から時間が経てば解除できない。


『恋椿姫』を解除したとて、死ねば

『曽根崎心中』が発動する。


「私に有利なようにみせて、何を企んでいるの」


「ふーん。それぐらいは頭が回るんだ」


「馬鹿にしてるの?」


「私が一人で消えればあんたの勝ち。


その前に

心中事件の真犯人を捕まえたら私の勝ち。


……私は、探偵社の一員だからね」


「……ええ。ええ、そうね」


女は私を捕まえたいがために、

こうして誘ってきているのだ。


『曽根崎心中』を行使している間は

世間の影、黒子となる私は捕まる訳ないのに。


ひとつの舞台が終わるのを待てばいい。


それだけですべてが私のものになる。


「その遊戯、のったわ」

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名も知らぬ人からの微笑み


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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時

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