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探偵社からの帰り道。
そう遠くはない道のりをゆっくりと進む。
「…………」
「…………」
其の距離は付かず離れず。
最初のうちは歩調を合わせる気がなく、
バラバラに歩き出したものの
今は何とはなしに合わせて歩いていた。
「相変わらず小さいね。
もっとゆっくり歩いてあげようか?」
「急ぐ理由は無いでしょう。
…中也なら黙って合わせてくれるのに」
態と名前を出して煽った。
中也に報復の爆弾がしかけられるかもしれない。
「そんなに中也が好きなら告白したらどうだい?」
「生憎と今は満たされてるんでね。
愛想が尽きて手放したいと言われたら
其れも考えようかな」
「私が考えさせるとでも?」
今回は向こうから手を取った。
何の抵抗も見せず大人しく手を握られて、
握り返すつもりの無い私は前を向いたまま。
「……お腹空いた」
「駄菓子貰ったじゃない」
「姐さんのとこ行こうかな」
「んふふ。私がお腹一杯にしてあげようか?」
上機嫌に、綺麗な笑顔で殺気を放たれる。
向けられる剥き出しの欲に手を握り返すことで
答えて、ちらと視線をあげ、鼻で笑った。
「随分と余裕が無いね。
……今回の騒動、何処まで分かってるの」
「何処まで? 其れはつまり…
君が
ということ?」
「はぁ……」
周囲に人はいない。
遅れてついてきていた社員達も皆、
私たちを見失っているだろう。
太宰が其れに気がついていながら
放置していた理由は、問う必要もない。
「君の事なら何でも分かっているよ。
身長、体重、スリーサイズ…」
「真面目にやってよ」
「異能力の所有者の居場所が分からないんじゃ
如何しようもないだろう」
「…分からないのか」
少しの驚愕に、明らかな落胆を滲ませて
私は手を振り解く。
「Aが私の為に其処まで熱くなって
呉れるだなんて、嬉しいね」
「五月蝿い。お姫様が寝惚けているせいだよ」
「解毒剤を用意して呉れたのは誰だったっけ」
「…永遠に眠ってろ。
私からは
あっさり離れた手を惜しむこともせず、
私たちは道を別れた。
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名も知らぬ人からの微笑み
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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時