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「れ、連続心中事件ですか?!」


「……敦君。私の顔に何か付いてるかい?」


「或る男女は山中で首を吊り、

また或る男女は崖から海に飛び込み、

刃物を互いに突き立て、異能力で首が落ちた」


「特務課は其れを事件と呼んでいるの?」


探偵社で心中と云えば間違いなく太宰治。


社員の注目を浴びても平然としている彼から

視線を外し、険しい顔の国木田くんに声をかける。


「話だけ聞いていると、

偶然(・・)心中が重なって起きただけ、

とも考えられると思うのだけど。何か証拠が?」


「調査以来と共に届いた詳細が此方です」


「…現場の状況、遺体の身辺調査、

……不自然(・・・)だ、と言いたい訳ね」


確かに今のご時世、傍らに心中を歌う男が

居るお陰で忘れそうになるが、

顔も知らないで付き合う男女がいるほど

恋愛に文字通り命を懸ける熱い人達は少ない。


探偵社に依頼が来たのは間違いなく此の男を

知っての事だろうが、其の役割では宛にならない。


「…治は一度も心中をした事がない(・・・・・・・・・)


此の件に関しては私達と同じ立ち位置だよ」


「んふふ、そーゆーこと」


満足そうに頷いて机に肘をつく。


視線は変わらず私に向けられていて、

其れから逃れるように顔を背けた。


「犯人を突き止めるのかい?


乱歩に頼めば済む話を態々会議する意味は?」


「A、そう目くじらを立てるな」


「……はい」


社長の声で口をつぐむ。


不貞腐れる私は乱歩ににじりよる。


乱歩が口に加えているスナック菓子を

指でつまんで取り上げた。


「ちょっと」


「乱歩、『超推理』してよ」


「嫌だ」


面倒臭い、と駄々を捏ねる頬を引っ張る。


「お願いだよ乱歩。私も面倒だと思ってるンだ」


「若しかして、Aさんの所にも依頼が?」


「うん。駆け落ちした娘が

其の晩に帰ってきたって云う話でね。


谷崎くんの報告を後で貰おうとしてた」


「其の晩に……?」


「嗚呼、離れた首以外黒焦げになってね」


「そ、れって_ぅぐ、」


未だ慣れないらしい。


探偵社のヘタレ二人は放っておくとして

青ざめたナオミを抱き締めに行く。


落ち着いたのを見計らって席に戻ると、

先程よりも強い視線を感じた。


「…何だ治、顔が険しいぞ」


「おっと、其れはいけないね」


いつも笑っていなくちゃ、と笑みを作る彼に

私も笑みをもって答えた。

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名も知らぬ人からの微笑み


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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時

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