西の7人の気まぐれ短編集 (ページ34)

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「あの」
「…！？小瀧くん！？
…もしかして、見ちゃっ…た？」

と、バツの悪そうな顔で言った。

「あんな大声で怒鳴られてるから何事かと思えば、先輩だからびっくりしましたよ。
ていうか、そんなにギリギリなら言ってくれれば良かったのに」

「…締め切りが迫ってるって言ったら、小瀧くんはモデルやってくれるの？…他の女の子がそう言ってモデルお願いしたら、小瀧くんは引き受けてたの？」

と、悲しそうな顔で言われて、俺から逃げるように走り去って行った。

なんやねん。そんな訳ないやん。

…来たら来たでうっとおしかったりするけど、そんな顔で居られると、なんだかこっちまで悲しくなってくるやん。

それに、来てくれないの、少しは寂しいって思ってる自分もいる。

自分の中で、答えは出ていた。

モデル、やろう。

あんなに困ってたなんて知らなかった。

それに、そこまでして俺に着せてみたい服って、なんだ。

先輩が走って行った方向を見ても、もう先輩の姿は無くて。

気付いたら、無我夢中で走っていた。

ていうか、先輩、どこやねん。

全然見つからんやんか。

多分、あんなにがむしゃらに俺にモデルをお願いしてくる先輩に、少し惚れつつあったのかも。

自分って、案外単純なのかもしれない。