西の7人の気まぐれ短編集 (ページ35)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:16,666 hit

4 ページ35

「はあっ…はあっ…先輩！A先輩！」

誰も使わないような裏庭で、一人静かに泣いている先輩を見つけた。

「…小瀧くん！？え、どうしたの？そんなに息切らして…」
「…はあっ…先輩…俺っ…」
「…そっか、断りに来てくれたんだよね？もううっとおしい、いい加減やめろって、そう、だよね。…っ、ごめん、」
「…先輩っ」
「わ、」

気付いたら、泣いてる先輩を抱きしめていた。
多分、体力のない俺が全力で走ったから、心臓が物凄いスピードで打っていて、息も乱れているから、今の俺、めちゃくちゃかっこ悪いやんな。
でも、子供みたいに泣くA先輩も、どっこいどっこいやん。

「そんな訳ないやん…俺、モデル、やりますから」
「…へ？」

ボロボロ泣いていた先輩は、きょとんとした顔で俺を見上げた。目は真っ赤で、腫れていて。
それでも可愛いと思ってしまう俺は、多分恋をしている。

「そんなに俺に着て欲しい服なんて、どんなもんか気になるやないですか」
「…ほんとに？ほんとにモデルやってくれるの？」
「それとも、もう他の人見つけちゃいました？」
「…今の私見て、本当にそう思う？」

と、頬を膨らます先輩。

「とりあえずそのみっともない顔で芸術学部行くの恥ずかしいやろ、落ち着くまで一緒におるから」
「みっともないって…」
「じゃあ自分で確認します？スマホスマホ…」

と、スマホを探すふりをしたら、

「いい！もう、年上をいじめないでっ！」

と、今度はぷりぷりと怒る先輩。

「可愛い」
「えっ？」

やばい、声に出てた。