西の7人の気まぐれ短編集 (ページ33)

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じゃあせめて名前だけでも！としつこかったから、名前だけ教えたら、
「私はAAです！！あ、3年生です！！」
と言われた。

上級生かい。

先輩でも、嫌なものは嫌。無理なものは無理。

「ねぇ、ほんとにやってくれないのぉ？」
と聞かれる。

そんな捨てられた子犬みたいな目で見られても、困る。それに、これ以上、校内で悪目立ちしたくない。

でも、Aさんは、どこからか俺の学部まで嗅ぎつけてきて、毎日俺に「モデルになって欲しい」と言うようになった。

こうなってしまえば、別の意味で悪目立ちする。

とにかく迷惑だ、やるつもりは無いから来るな。

毎日来られて、毎日伝え続けたけど、Aさんはめげなかった。

ある時は「運命だ！」と言われ、ある時は「君しかいない！」と、服のモデルの勧誘とは思えないような台詞を口にする彼女を見て、だんだん頑なに拒んでいた自分が申し訳なく思えてきてしまう。それくらい必死なのはなんでだろう。

と思って聞いてみても、「いや、ただすっごいかっこいいから、モデルになってくれたら絶対映えるだろうなって思って！それだけ！」
と。

なんだそれ。
次来たら、本当にキッパリ断るつもりでいた。

そんなある日のこと。

A先輩が、芸術学部の教授に

「まだ提出出来ないのか？期限そろそろだぞ？ファッションショーは2週間後だし、写真の提出日は来週だ。もう出てないのはお前だけだからな」
と、怒られている所を見てしまった。

そんなの聞いてない。

ていうか、そんなに切羽詰まってるのなら、そう言ってくれればよかったのに。