乗り過ごし注意【志麻】

32 ページ34

やめてと言った遭遇日からあの人が塾で話しかけられることはなくなった


家までついてくることもなければばったり会うなんてこともない


だから約束の日の今日特に気兼ねもなく、志麻くんのお家にお邪魔するために電車に乗っている


やめてと少し言っただけで1年悩まされていた問題がこんなにも簡単に解決できるなんて思ってもいなかった


人間、行動あるのみよね


そのおかげで相変わらず勉強は嫌だけれど前よりも楽しく塾に通えている


そんなことを考えていると、スマホのバイブが鳴りメッセージが届く


志麻坂田遅れてくるからカフェ来て


志麻くんの家まで一緒に行く予定だった坂田さんが遅刻しているようだ


歌い手さんは時間を守らないイメージが強いから特には気にはしないけれどそれは本当なんだな


Aわかった
Aもうすぐ駅着くよ


志麻くんの家がカフェからどのくらい遠いのかはわからないけれど、私の方が早く着きそうだ


もう〇〇駅に着いてしまったので、スマホでもう駅を出たことを打ち込みながら歩いて行く


打ち終わり、送信を押した瞬間に右肩が叩かれた


「またあいつのとこに行くの？」


振り返ると、あいつがいる


なんでここにいるの？


「ねぇ、Aちゃん
また僕以外の男と一緒にいるのはやめるって約束したじゃん」


この男は本当に何を言っているのだろう


「私の行動にあんたに口出しされる理由がないんだけど」


「何言ってるんだよ
Aちゃんから謝って約束してきてくれたろ？」


「いや、あんたとそんなこと話したことないし」


そもそも最後の会話は今後関わるなという内容だったはず


こいつの思考回路がわからない


「もう帰ろう
あんなやつと会っちゃダメだ」


そう言うと私の腕を掴みながら駅の方へ歩き出す


「ちょ、離して」


私は言いながら腕を振り回すがそのまま引きずられて行く


この状態で人目につくのはお互いにとってよろしくない


マジで腕外さないと


ぐるぐる思考は回るが状況は改善しない









「おい、何してるん」

33→←31

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す