居候は身構える ページ6
「…炭？」
『違いますー！卵焼き……になる予定だったものですー！』
神宮寺の前のダイニングテーブルには、炭のような物体が皿にのって置かれていた。明らかに苦そうなその物体。
神宮寺の反対側に座るAが言うには卵焼きらしい。どう見たって卵焼きには見えない。
一体何が？
『せ、先生が忙しそうだったからさー、作ろうと思って…』
「…これは、私に？」
『あー、えっとー、ひ、一二三に指示してもらいながら作ったよ？でも…私には無理だった。てへっ！』
「…私のために？」
『先生がパッて食べて仕事に戻れる食べ物作ろうと思ってたんだけどぉ…。炭になっちゃった』
「…」
『…』
アハハーと頭をかきながら笑うA。神宮寺はじっと炭…ではなくて卵焼きを見詰めている。
謎の沈黙にいたたまれなくなり、Aはスーッと玉子焼きののった皿を自分の方へ寄せる。
そして、皿のあった場所にコンビニで売っているサラダを置いた。
『…さすがに食べさせられないんで、買ってきました。先生今日夜勤だよね。また戻るんでしょ？』
「…」
『あ、もしかして、フライパンの心配してる？大丈夫だよ、それは一二三のお陰で無事だった！』
「A」
『えっ、あ、はい』
沈黙をなくそうと喋り続けるAに、不意に神宮寺が話しかけた。
呼ばれたAは、何となく背筋を伸ばす。
「その卵焼きかしなさい」
『え？あ、捨てます？生ゴミですかね？私がすててきま…』
「食べます」
『…へぁ？』
何 を 言 っ て い る ん だ こ の 医 者 は 。
神宮寺を見てみれば至って真剣な目をしており、冗談ではないことが分かる。
正気かコイツ！？と心で叫ぶAの手からサッと皿を取る神宮寺。
そのまま炭と化した卵焼きを口に含んだ。
思わずAは『あﾞっ！』と、濁点のついた声をあげた。
『せっ、せんせー！ペッしなさいペッ！体に悪い！先生医者でしょ！お仕事しなきゃでしょ！』
「卵がもったいないので。もうのみこみました。大丈夫、私は体が強いから」
『oh、no！』
ギャーギャー悲鳴をあげて騒ぐAを他所に、神宮寺は席から立ち上がって上着を手に取った。
「じゃあ私はもう行くね」
『えっ！そんな！食べ物食べました！？』
「大丈夫だよ。じゃあ、ちゃんと寝なね」
『い、行ってらっしゃい…』
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ルルア(プロフ) - とてもおもしろいです！ (2020年6月24日 20時) (
レス) id: 014ef85129 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：MIDARE. | 作成日時：2020年5月7日 2時
