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……鼻腔いっぱいに広がるキバナの香りが、何故か嫌ではなかった。


ただ、今の状況を理解する事には少々時間がかかった。


「……、…おめでとう。」


誤魔化すように、絞り出すようにそう付け足したキバナは、ぎこちない動作で離れた。



















衝動のままに少女を抱きしめてしまったキバナは、抱きしめた後にハッと我に返った。


「……、…おめでとう。」


取ってつけたようにそう言い、ぎこちなく離れる。


少女が拒否を示した時少し震えていた手のせいで、キバナらしくない、周りを見ない行動に出てしまった。


Aは嫌な顔をしているかもしれない、とキバナはおそるおそる表情を伺う。


「…あ、りがとう、ございます…」


状況が理解出来なかったようで、少しぽかんとした表情をしている。


少女のその天然さに救われたとキバナはほっと胸を撫で下ろし、最初の頃と比べたら大分心を許してくれているな、とキバナは嬉しくなる。


それでもまだ壁は感じるが、欲目を抜かしても、他の人よりは幾分か態度は柔らかい…と信じたい。


「これで用事は終わりですか?じゃあ解散で…」


「まだお前に案内されてねえけど?」


覚えていたか、という風に目を細める少女に、キバナは油断できねえぜ、と息を吐く。


「キャーッ!」


と、少し遠くで、キバナにとっては聞きなれた黄色い悲鳴が耳に届いた。


「キバナ様!」


「んっ!?」


自身の名前を呼ばれ、キバナはハッとする。


サングラスを外したままに、少女と会話していたのだ。


あっという間にファンや野次馬に囲まれたキバナは、たとえ雑踏の中に居ようと直ぐに見つけられた少女の姿を見失ってしまう。


「悪いが今日はオフでな…」


困ったように笑いながらファンたちに話すが、どうやら右から左らしく、キバナを写真に収めようとシャッター音が鳴り止まない。


(まずいな……)


まさか人混みをかき分けてAを捕まえることなどできない。


ビュオッ!


急に、目を開けていれないほどの強風がキバナたちを襲う。


砂埃が巻い、ファンや野次馬たちは腕で顔を覆う。



















なんだか気に食わなかった。


話の途中で割り込まれたことが。


だから少女は、普段からは考えられないような行動をしたのだ。


ファンに囲まれたら置いていくという言葉を、自ら撤回して、ボーマンダを出し、背中に飛び乗り、こう命令したのだ。


「…あの人を持って飛んで。」


少女の命令に忠実に従い、ボーマンダは強い風を巻き起こしながらキバナを器用に掴んで飛び立った。

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影裏(プロフ) - レスありがとうございます!!!クチナシさんとの絡みも楽しみです! (2022年6月13日 8時) (レス) @page13 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
影裏(プロフ) - めちゃおもしろい、、これからの展開が気になります!!更新頑張ってください! (2022年6月12日 4時) (レス) @page13 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
珀琥(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも応援してます (2022年4月24日 15時) (レス) @page2 id: 8db741d522 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:モンブラン | 作成日時:2022年4月23日 19時

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