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あっという間に日は過ぎるもので、もうキバナが言っていた最終日、になっていた。
少女はお得意の逃げ足の速さを使うことはできず、嫌々キバナについて行く。
キバナにお似合いの豪華客船に無理やり一緒に搭乗させられ、ヒウンまで貸切のそれはそれは快適な船旅に付き合わされる。
「……その写真、あとで消してくださいね」
重々しい雰囲気を纏って少女はそう言うも、キバナはNOと言う。
「これは消さないし、誰にもみせねえよ。」
それならばと少女は、キバナにスマホロトムを向け、
パシャッ!
シャッターを切った。
「……」
確認すると、不意をついたつもりが、バッチリカメラ目線でニヤリと笑っている写真が。
「あなたがその写真をメディアかなにかに出したら、私もこの写真で対抗します。」
「その心配は杞憂で終わるぞ?ロック画面にでもしておけ。」
「面白い冗談ですね。」
そう呟く少女はニコリとも笑っていない。
「……お前はなんでそんなに顔見せたがらないんだよ。」
「面倒だからです。全て。」
くだらない肩書きのせいでね、と付け加える
「それだけじゃないだろ。」
少女はピタリと止まる。
「……どういう事ですか?」
あの時、キバナが、キュレムの姿を見ていたということ?
私の顔だけではなくポケモンの事も含めて脅しにかけているということ?
「……お前の過去を、アララギ博士に聞いた。」
「…なんだ、その事ですか。」
キバナが自身の過去に探りを入れようがそれはどうでもいい。
私と、みんなの生活が壊されないのなら。
昔の話と言われても、少女は楽しい思い出のことしか振り返らない。
親の事など最早言われるまで思い出さない。
「昔、私の誕生日に、みんなが私にサプライズをしてくれたんです。」
それぞれが摘んできたお花を、シュラが凍らせて、みんなで渡してくれたプリザーブドフラワー。
「私の家の扉にかかってるお花、みんなが作ってくれた私の誕生日プレゼントなんです。」
あなたが見たかはわかりませんが、と言い、ふ、と笑う。
「誕生日、いつだよ。」
「今日ですが。」
「はぁ!?」
「別に祝って欲しいとは思ってないので安心してください。」
ポケモンたちが朝からやたらソワソワしているのを見て、そういえば今日か、と思い出しのだ。
律儀に毎年祝ってくれるポケモンたちの為に、気づいてないフリをするのだ。が、それでも口角は自然と上がり、普段より幾分も機嫌が良い事はバレバレだ。
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影裏(プロフ) - レスありがとうございます!!!クチナシさんとの絡みも楽しみです! (2022年6月13日 8時) (レス) @page13 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
影裏(プロフ) - めちゃおもしろい、、これからの展開が気になります!!更新頑張ってください! (2022年6月12日 4時) (レス) @page13 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
珀琥(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも応援してます (2022年4月24日 15時) (レス) @page2 id: 8db741d522 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モンブラン | 作成日時:2022年4月23日 19時