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『ヒュラララ!』
「うん分かった!ありがとう!近くに行くね!」
ポケモンの言葉など分かるはずもない少女は己の都合の良いように解釈して、凍っている洞窟を進む。
少女がこの場所を見つけたのは、少女が驚くほどの方向音痴だったからだ。
ジャイアントホールでメタモンを捕まえようとして、元来た道を忘れ、迷路のように入り組んだ道を歩いた末に見つけたこの場所。
キュレムに出会っても尽く凍える風で出口まで吹き飛ばされ、吹き飛ばされ、踏ん張る力が身につき、最近は手ぶらで来たら威嚇だけするということを発見したのだ。
「キュレムが特別な存在だってことは私だってわかるよ。だって神話にだってなってるんだから。でもさ、仲良くなろうとするのはそんなに悪いことなの?」
手を伸ばせば触れられる距離まで近づけるようになった少女は、キュレムにそう問いかける。
「私がポケモンたち連れてこないのはキュレムが嫌そうだったからそうしたけど、キュレムにも私の家族のこと知って欲しいな。」
過去の自分と重なった訳では無いとは言えない。ただ同情している訳でもなく、少女はただ傍にいて、普通に話したかっただけだ。少女にとっては伝説なんて肩書きは、ただのお飾りでしかない。
『ヒュラ…』
毎日毎日飽きもせず会いに来る物好きな人間のことをその時初めてキュレムはじっと見つめた。
ミッドナイトブルーの髪と、アメジストの瞳、そしてキュレムが付けたであろう傷。
そしてその目線に気付いた少女は、なんでもないという風にキュレムに手を近づける。
「これはキュレムのせいで付いたものじゃない。私がキュレムと仲良くなるために付いた傷だよ。」
そう言って少女は本当に誇らしげに傷を見る。
「ねえ、私と一緒にこない?誰にもキュレムを見せないし、私が守ってあげる。」
守ってあげるなど、たかが小娘に出来ることなど限られていると一蹴するキュレムだが、少女と暮らすのも悪くないと思い始めている気持ちもあった。
「独りぼっちは寂しいよ。私と行こうよ、もう名前も考えてるんだよ!」
あと入りたいボールも選べるよ、並べるから待ってね!とキュレムの前に大量のボールを並べ始める。
ここまでされたらもうキュレムに逃げ場はない。
『…ヒュララ…』
そして選んだのはムーンボール。
足で器用に蹴り、少女の元へ転がす。
「…これからよろしくね、シュラ!」
満面の笑みでボールを手に取り、キュレムへ向かって投げた。
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影裏(プロフ) - レスありがとうございます!!!クチナシさんとの絡みも楽しみです! (2022年6月13日 8時) (レス) @page13 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
影裏(プロフ) - めちゃおもしろい、、これからの展開が気になります!!更新頑張ってください! (2022年6月12日 4時) (レス) @page13 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
珀琥(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも応援してます (2022年4月24日 15時) (レス) @page2 id: 8db741d522 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モンブラン | 作成日時:2022年4月23日 19時