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「勝手に私の名前出さないでよクチナシさん。それでも警官なの?」
「はいはい、機嫌直して。」
キバナは目の前で繰り広げられている会話に入れずに立ち尽くしていた。
本来ならAがこっちを見てビンタの1発でもかましてくるのかと予想していたが、まさか視線すら寄越さず、まだキバナが同じ空間にいるということに気付いていない。
ほんとに人に興味が無いのだと思い知らされる。イッシュに居た時Aと目を合わせて会話出来ていたのが奇跡なくらいだ。
「クチナシさん……嫌い…だもん…」
「……」
「…」
そう言ったきり、Aは静かになった。
「……寝たな。」
そう言って流れる動作で自身の膝を枕としてAをソファに横たわらせたクチナシにキバナはなんとも言えない表情になる。
「そうピリつくなって。Aに恋愛感情なんて抱いてないからさ。強いて言うなら可愛い娘だ。」
何気なく言われた言葉だが、表情の管理に長けているキバナの微細な表情の変化からそこまで感じ取れるのは鋭い洞察力が無いと不可能な事で、図らずもクチナシの言葉で表せない凄さを感じる。
「今ちょっと酒飲んじゃってね、Aが起きるまでまたちょっと待ってな」
「酒!?コイツまだ未成年じゃ」
そこまで言って、テーブルの上に置かれている中身の少ないコーヒー牛乳のような飲み物を見てある程度の状況は分かった。
「なんだい、おじさんがカルーアミルクなんて可愛いもん飲んじゃダメだってかい?」
「いえ、全然…」
さすがのキバナも年上にタメ口を使うほど常識がない男ではない。
「……Aからある程度の話は聞いたけど、ぶっちゃけあんちゃん、どう思ってんだ?」
飄々として掴みどころのないと言われているクチナシの、一気に確信を突きにきた質問に、キバナは反射のように答えた。
「好きです。」
そのあまりになんの捻りもない2文字の言葉だが、それが全てなのだとキバナはクチナシを見る。
「…まあおじさんも長い間Aの保護者がわりやってきて、大切に思ってんだ。こんな真っ直ぐなバトル馬鹿なかなか居ないよ。目光らせててもいつも生傷作って帰ってくる。」
「それでも良いんだ。女の子だから傷作るなとかは言わねえよ。傷作っても満足そうにポケモン抱いて帰ってくるんだからさ。」
「おれが言いたいのはな、あんちゃん。悲しませることだけはするなって事だ。」
淡々と話すクチナシだが、これは警告でもあるとキバナは察した。
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影裏(プロフ) - レスありがとうございます!!!クチナシさんとの絡みも楽しみです! (2022年6月13日 8時) (レス) @page13 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
影裏(プロフ) - めちゃおもしろい、、これからの展開が気になります!!更新頑張ってください! (2022年6月12日 4時) (レス) @page13 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
珀琥(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも応援してます (2022年4月24日 15時) (レス) @page2 id: 8db741d522 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モンブラン | 作成日時:2022年4月23日 19時