イッシュの狂戦士は (ページ10)

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少女はあまり、強い力でものを握ることが出来ない。

それは、臆することなくポケモンと触れ合い、真っ直ぐに向き合いすぎる少女の気質のせいでもある。

噛みつかれては怪我をし、完治したかと思った次の日には凍傷になり、その時の傷跡が残る。またある日にはポケモンたちと遊んでる最中の些細な傷など。

「みんなと触れ合わないと寂しくて死んじゃう。」

ポケモンたちが傷を見て怒ったり心配すると、決まって少女はそう言って笑う。

中でもキュレムは、触ったら直ぐに手がドライアイスに触れているような鋭い痛みに襲われてしまうほど冷えた体を持っている。

そのせいか、触れられることを極端に嫌うが、少女はお構い無しに触るのだ。

「私のこと、嫌い……？」

そう言って本当に寂しそうに、悲しそうに笑うものだから、キュレムは極力少女を拒まぬようになった。

少女の家に足繁く通うアララギは、その手の傷を見て医者に行くように再三言ってきたが、少女がそれを素直に聞くことはなく、いつも素手でポケモンたちと触れ合うことをやめなかった。

「…あなたの手持ちを把握していないからどんなポケモンと触れ合っているのか見当つかないけど、せめてグローブだけは付けなさい。」

と、アララギは黒いグローブを少女に渡す。

どんなタイプのポケモンでも気にせず触ることが出来るグローブだとアララギは説明して。

「…私がポケモンに触る時怪我を気にすることがあるとでも思うんですか？この、私が？」

寧ろ勲章だと言うように少女は怒りの目でアララギを見つめる。

つき返そうとした少女を止めたのはジャローダだった。

そんなジャローダの琥珀色の瞳と数秒見つめ合い、少女は諦めたように笑う。

「……ハシモトに免じて、これは貰っておきます。……ありがとうございます。」

ポケモンの事になるとどうにも融通がきかず、感情的になる少女だが、そんな少女だからこそ、ポケモンたちは信頼し、少女もポケモンに絶対の信頼を置いている。

言葉が通じずともお互い何を思っているのか分かるのね、とアララギは温かい気持ちになる。

暫くは、グローブを付けると感触が分からないとすぐに外す少女だったが、そうするとポケモンたちがボールから出てこなくなったり出てきたとしても少女から逃げ回ったりするため、少女は仕方なくグローブを付けることを習慣づけるようになった。

「みんな私に似て頑固ものだね」

そう少女が嬉しそうに笑うとポケモンもにっこり笑うのだ。