イッシュの狂戦士は (ページ6)

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“イッシュの狂戦士”

(ベルセルク？そんな大層な名前付けられてもね...)

手持ちのポケモンはジャローダしか持っていないと言われているその人物。

(ハシモトだけで充分勝てる相手しかいないもん。)

イッシュの四天王を全て倒し、チャンピオンまであと1歩の所で戦うのを辞めてしまったという噂を最後に、その人物の話が流れてくることはなかった。

(チャンピオンも倒したけど、新チャンピオンになるのは面倒だから無かったことにしてもらったんだよね)

＜突如姿を消した生ける伝説！＞と、デカデカと取り上げられてるネットの記事に大きなため息をつく少女は、運良く空きが出たらしいホテルの一室に泊まっていた。

「やっぱ顔出さなくて良かったな...変に注目浴びるのも疲れちゃうだろうし。」

着慣れたパーカーを脱ぎ捨て、スウェットに着替えた少女は、ベッドに大の字になる。

SNSを開けば、数件の通知。

景色と野生のポケモンの写真ばかりを投稿するだけのアカウントに反応する人は少なく、少女はろくにコメントを読まずにぽいとスマホロトムを放る。

...その数分後に、新着のネット記事が更新された事を少女は知らない。

*

＜第二鉱山で記録的な寒さを観測！＞

第二鉱山と言えば、常に作業員とポケモンの熱気と土の匂いで満たされた場所。

たとえこおりタイプのポケモンが歩いていようと、そう簡単に温度が下がることはまず無い。

「とうとうガラルに来たか...」

挑戦的に笑う男は、とある人物のSNSとその記事の関連性にすぐさま気付き、笑みを深める。

__イッシュ各地で起こるあらしがピタリとおさまった時、その人物はこう投稿した。

#やっと捕まえた
#すぐ逃げる
#おばあちゃんのスープ

シンオウでアンノーンが全種見つかった時、その人物はこう投稿した。

#文字むずかしい
#同じの3つ捕まえちゃった
#名前どうしよう

そしてガラル、第二鉱山での投稿。

#マッギョ可愛い
#第二鉱山
#キラキラ

イッシュの狂戦士と謳われるその人物が、ガラルに来てると見てまず間違いなかった。

現在、エンジンシティに留まっているということは、確実にスボミーインに泊まっているのだろう。

謎が多いその人物の事で、唯一分かっていることがあるとすれば、負けたことが無い。という嘘みたいな情報だけだった。

ただ、一介のジムリーダーとして、いや、キバナ個人として、ただの1度だけでもいいからその人物と戦いたいという一心で、逸る気持ちを抑え、夜の電車に飛び乗った。