イッシュの狂戦士は (ページ44)

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勝っても負けてもすぐここを後にしようと少女は固く誓った。

ガラルを出たあとも追いかけ回されるなんて冗談じゃないと苦い顔をする。

それに、みんなとジョウト地方行く約束をしているのだと目を閉じる。

久しぶりに虫取り大会でも参加しようかな、あのわんぱくな短パン小僧たちはまだ参加してるかな、と数年前の事を思い出し、微笑む。

気まぐれに参加しては、毎回優勝をもぎ取っていく少女の事を短パン小僧たちはライバル視して、少女が参加する時は血眼になってポケモンを探していた。

そろそろポケモンスクールへ行く年齢かもしれないな、と少し寂しい気持ちになりながら、ハッ、とする。

いつの間にか数試合が終わったようで、キバナに負けたファンたちが、満足そうに帰る準備をしたり、観客席に座ったりしている。

キバナとの試合は動画はNGだと前もって説明されていた為、誰もスマホロトムを出しておらず、各々目に焼き付けているようだった。

私が戦う時には試合終わった人達帰ってて欲しいな、と叶うことは無いと分かってる願いを密かに抱く。

私が負けたらファンの人達はさぞ喜ぶんだろう、と考えると、負けたくない気持ちが湧いてきた。

少女は全てのポケモンを愛してる。が、同時に、とても負けず嫌いの性格のせいで、たまに野生のポケモンと取っ組み合いの喧嘩をする時がある。

最近は少女のポケモンたち、主にジャローダが厳しく目を光らせている為そのようなことは無いが、凶暴なポケモンであっても関係なしに向かっていく少女が、1度負けたくないと思った気持ちを取り消す事は、不可能に近かった。

勝っても負けても追いかけ回されるなら、勝ち逃げしてやろうと。

そんな簡単にキバナを倒せるとは思わない。思わないが、

「…負ける気もしない。」

目を輝かせて、呟いた。

今も昔も、ポケモン以外に少女が欲しいのは、勝利、ただそれだけなのだと。

〈続いて、A選手VSジムリーダーキバナの戦いが始まります。選手は__〉

アナウンスで呼ばれた少女は、不躾にジロジロ見てくるファン達の視線をものともせずにバトルフィールドへ足を進める。

胸が逸る。

ボールを握る手に力が込められる。

早く戦いたいと、渇望する。

バトルフィールドへ足を踏み入れた瞬間、少女は、少女を”イッシュの狂戦士”たらしめる異常な程のバトルへの強い思いを胸の内に膨らませ、キバナへ強い視線を向けた。