イッシュの狂戦士は (ページ38)

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すっかり暗くなり、月の光で何とか互いの顔が見えるかどうかの深夜23時。

「お、ちゃんと来たな。」

「……」

「なんで居るんだ、って顔してるな。」

「…すごいですね。当たりです。分かってるならテントに戻って寝たらどうですか？」

相変わらず毒を吐く少女の言葉を軽く受け流すキバナは、ポンポンと自分の隣の地面を叩く。

そこに座れということだろうと容易に想像が付いたが、少女はぷい、と顔を背けて、カレーを手に取る。

「あったかい…」

手に取ったカレーが、ほのかに温かい事に気付き、目を見開く。

まさか来るまでこまめに温め直していたのか、と、チラリと見ると、焚き火の灯りで照らされているキバナが、満面の笑みで返した。

「ありがとうございます…」

お礼を言い、その場に座る少女に、キバナは不満そうに近付いてきて、隣にドカリと座った。

「……。」

少女は場所移動することも考えたが、余計面倒になることは分かっていたので、その場でパクリと1口食べる。

(甘い…)

少女が好む、甘口のカレー。

ついキバナの顔を見上げると、嬉しそうに歯を見せて笑う。

「美味しいか？」

「…」

口の中にカレーが入ったままだったので、コクリと頷く。

そうして黙々とカレーを食べ、完食し終わり、キバナに食器を渡す。

「ごちそうさまでした。」

そう言い、少女は徐に立ち上がり、ボールを出す。

今日は立て続けに色々な事が起こったから、頭を整理したいと。

それを見たキバナも立ち上がり、ボールごと少女の手を握る。

「A…約束したろ？」

「してませんが？一言も。」

「じゃあ今約束だ。勝手に1人で飛ぶな。」

何故キバナとそんな約束をしなければならないのかと少女はムッとする。

そう言えば勝手に帰られたら困ると言った旨の事を言っていたなと思い出し、少女はキバナに提案する。

「私の後ろに乗りますか？それなら良いでしょう。」

キバナの了承を得ることも無く、逆の手でボーマンダを出す。

「ウスイ、私の他にあと1人乗せられる？」

首のあたりを撫でて聞けば、余裕だと言わんばかり鳴いた。

キバナの手を解き、素早くボーマンダの背に乗った少女は、キバナに目を向ける。

「乗りませんか？乗らないなら私1人で飛びますが。」

そう問いかけると、キバナはやれやれと言った様子でボーマンダ飛び乗った。

「俺を乗せたままイッシュに帰るなよ？」

「まさか。途中で海に投げ捨てますよ。」

そんなやり取りをしながら、少女はボーマンダを夜の空へ飛び立たせた。